インタビュー 【トップインタビュー】ラリーで山村、産業振興=太田稔彦・愛知県豊田市長 2022/11/28 08:30

愛知県豊田市の太田稔彦市長(おおた・としひこ=68)は現在3期目。これまで力を入れてきた課題に、団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」と環境問題を挙げる。2025年問題では、市は総合診療医の養成やロボットの活用による在宅医療の仕組み構築などに力を入れており、「全国的に見ても先進的だと自負している」という。ただ、介護予防については「コロナで後退した。問題はむしろ深刻になっている」と危機感を持つ。
環境問題については、市職員時代に環境モデル都市の担当などをした経験から「カーボンニュートラルを目指すことが一つの大きな関心事」だとする。また、市は昨今の燃料費高騰などを受け、省エネ家電への買い替えに補助金を出す制度を開始。「この状況をうまく利用できれば省エネ、創エネ、蓄エネの動きをもう一段加速できるのではないか」とし、23年度も引き続き同様の取り組みを進めていく方針。また、「来年は3R、食ロス、省エネなどに重点化した市民運動を展開しようと検討している」と明かした。
トヨタ自動車のお膝元である市の最近の話題は、世界ラリー選手権(WRC)、ラリー・ジャパンだ。市は10日~13日に開催された22年大会の会場の一つ。23~25年大会は会場の一つとしてだけでなく、運営主体にも名乗りを上げており、すでに23年大会については市などが主催すると決定している。市によれば、自治体がラリー・ジャパンの主催者になるのは全国初。
名乗りを上げた理由は主に三つある。一つ目が山村振興。「(ラリー・ジャパンは)大半が山の中を走る。美しい日本の原風景、山の価値を再評価する機会にしたい」と話す。二つ目が交通安全。22年大会でもドライバーらが子どもたちに交通安全の重要性などを語るラリー教室を実施した。「ラリーはむちゃくちゃな走りをするイメージがあるが、極めて高度な運転技術があってこそ。これ以上の交通安全教育はないだろう」と語る。三つ目は産業振興。「WRCでは、ラリーカーがハイブリッド車になったり燃料が工夫されたりと、どんどん進化する。それが一般車両の開発に落とし込まれる。ラリーを応援することはクルマのまちとしては産業振興そのものだ」と強調。「ラリーは極めて公益性の高い興行。責任の重さはものすごく感じる」と気を引き締める。
市は債権徴収に関する行政改革にも力を入れる。これまで各課で行ってきた債権回収業務を債権管理課に集約、弁護士との連携などにより未収債権やコストの削減に取り組んできた。「一番の肝は(社会福祉協議会との連携強化などにより)滞納者の自立を促し、将来は普通の納税者になってもらうということだ」と説明。「まさに誰一人取り残さないという、SDGsの考えに沿った取り組み」と評価する。この行革は、地域課題の解決に向けた先進的な取り組みを表彰する「第10回プラチナ大賞」で優秀賞にも選定された。市職員らについて「すごいですよ、彼らは」と笑みをこぼした。
〔横顔〕早稲田大商卒。1977年豊田市に入り、経営政策本部長、総合企画部長などを歴任し、12年に市長就任。コロナ以前は市職員によるビッグバンドでテナーサックスを吹いていた。
〔市の自慢〕「『先端』と原風景が共存している。海以外は何でもある」(太田市長)という。
(了)
(2022年11月28日iJAMP配信)