インタビュー 【トップインタビュー】裁判官の判断力を生かして=浅見宣義・滋賀県長浜市長 2022/12/05 08:30

「市長も裁判官も、大事なのは判断力だ」と語るのは、滋賀県長浜市の浅見宣義市長(あさみ・のぶよし=63)。裁判官時代に得た知見を生かし、人口減少などで衰退する故郷の再興へかじ取り役として手腕を発揮する。
大阪高裁判事を退官し出馬した2月の市長選で初当選。住民が夢や希望を持てる「未来図」を示せるリーダーへの交代や「ハコモノ行政からの脱却」など改革推進を訴えた。「長浜は9市町が合併した経緯があり公共機関が多い」といい、「今後は医療や教育、文化や産業などに投資したい」と強調する。
市は90年代の一時期、東洋経済新報社の「住みよさランキング」で日本一だったが、現在では大阪や京都といった大都市圏に近い県南部などへの人口流出に苦しむ。浅見氏は、医療確保のための病院再編や学力向上に向けた情報通信技術(ICT)教育推進に取り組むほか、風力発電をはじめとしたエネルギー産業の誘致などを構想する。「県南部や岐阜、福井から人口移動し、新産業をはじめとして栄える『県北の都』を実現したい」考えだ。
キャリアの原点は、13歳の時に地元で経験した選挙違反事件。解職請求(リコール)運動が起き、町議会は自主解散したという。「世の中が良い方向に変わるのを見て感激した」といい、「世の中を良くする仕事」に就くため裁判官の道へ。33年間務めた後、「13歳の志に戻り、故郷のためのことを」と市長選出馬を決意した。
「裁判では法律という基準があり、行政は自ら基準を作っていくところがあるが、判断が大事なところは似ている」と語る。市長の仕事の魅力は「自分で大きな絵を描けること」といい、「大変だがやりがいがある」。
〔横顔〕柔和な物腰だが、中学、高校時代は野球部の鬼キャプテンとして恐れられたという。趣味は歴史関連の書籍を読むことや史跡巡り。座右の銘は、一休さんの言葉で「気は長く、心は丸く、腹立てず、人は大きく、己は小さく」。
〔市の自慢〕住民力。400年以上続く長浜曳山祭りは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されているが、「長浜には殿様がおらず、住民が歴史遺産を守ってきた。住民力が一番の誇りだ」と力を込める。
(了)
(2022年12月5日iJAMP配信)