インタビュー 【トップインタビュー】人口増維持へ子育て施策やまちの顔づくり=木佐貫辰生・宮崎県三股町長 2022/12/06 08:30

多くの自治体が人口減で苦しむ中、1970年国勢調査から直近調査(2020年)まで人口増を続けている宮崎県三股町。町政のかじを取る木佐貫辰生町長(きさぬき・たつお=70)は9月から4期目に入り、「子育て支援施策をさらに進め、中心部活性化などにも力を入れたい」と意気込む。
人口増を続ける要因は、県内第2の都市である都城市に近接する有利な立地や環境の良さが指摘されるが、それらに加えて木佐貫氏は「子どもの医療費無料化など子育て世帯の支援策をいち早く実施してきたほか、都市計画税を廃止するなど有利な税制も移住、住宅建設を後押しした」と政策を振り返る。
一方、今年に入り住民基本台帳による集計では人口微減の兆候も表れており、木佐貫氏は「危機感がある。さらに子育て支援、県内外からの子育て世帯の移住定住促進に取り組む」と話す。「医療などで多くの子育て支援策を実施したが、最近では待機児童ゼロを目指し大幅に学童保育を拡充すると同時に利用料軽減策も導入。来年度には中学校の給食費無償化を実現したい。保育園の副食費軽減なども検討したい」ときめ細やかな支援策を練る考え。
同時に、「住んで良かったと思える町、楽しめる町」のため中心部活性化や交通網再構築にも力を入れる。木佐貫氏は、町の発展に伴って、隣接する都城市寄りに開発が集中したことを危惧。同市とは消防や医療で連携を強化しながらも、「三股町は合併せずに『自主自立の町』を貫いてきた。町の『顔』である中心市街地を復活させたい」と、中心部の町営団地跡地などに、健康づくり、子育て、生涯学習、食と買い物などの複合交流拠点を整備する構想を進める。加えて、中心部の主要施設と、周辺の集落などを結び、周回するコミュニティーバスの交通網をつくるためのモデル事業にも着手する方針。
人口増を維持し、魅力的なまちづくりに本腰を入れるためには市職員が一丸となり取り組むことが重要だ。町は昨年「職員心得10か条」を策定した。「役場は町民の幸せに貢献し発展を実現する役に立つ所」「率先垂範の精神で物事に取り組むことが重要」。鼓舞する文言の一方で「独りで悩まず、上司に報告・連絡・相談しチームで進める」ことも強調。木佐貫氏は「職員は最前線で働くのでプレッシャーがかかりストレスもたまる。それをカバーするのも町長や幹部の仕事だ」と町職員出身ならではのリーダーシップでけん引する構えだ。
〔横顔〕早稲田大卒後、役場入り。各課長を経験し多くの町民と顔の見える関係を築き、平成の大合併の際は副町長として、「自主自立」の方向性を確認。長い行政経験を生かす。
〔町の自慢〕豊かな花と緑と水。伝統芸能や市民演劇など文化も盛ん。希少な国産ゴマや、日本初の水出し茶とされる緑茶など、ユニークな特産物も多い。
(了)
(2022年12月6日iJAMP配信)