2023/令和5年
129日 (

インタビュー 【トップインタビュー】脱炭素で市のブランド向上=松下浩明・千葉県山武市長 2022/12/16 08:30

松下浩明・千葉県山武市長

 千葉県の自治体で初めて2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を宣言した山武市。表明は大規模な長期停電を引き起こした19年の房総半島台風の翌年で、松下浩明市長(まつした・ひろあき=61)は「台風を経験し、地球温暖化を回避することがまちの未来を切り開くためだと考えた。脱炭素施策を推進して未来のあるべき姿をいち早く形にし、市のブランド力を高めたい」と話す。

 19年の台風では暴風で特産のサンブスギが多数倒れ、電線や電柱を直撃し、大規模停電が発生した。「木々は幹折れし、山は無残だった」と松下氏は振り返る。

 温暖化の影響とされる自然災害が増える中、市での被害も受け、松下氏は環境に優しく、防災に強いまちをつくるには脱炭素化に向けた取り組みが不可欠と実感したという。現在は、市内の全ての建物への太陽光発電の設置、木質バイオマスの活用、地域内で電力供給をまかなう「マイクログリッド」の実現、低速で走る電気自動車「グリーンスローモビリティ」などの導入を目指している。

 台風のとき、手入れが行き届きにくくなっていた森林は大きな被害を受けた。そこで、今年度からは県内の浦安市が山武市の森林整備費用を負担することで、浦安市のCO2排出量を相殺する「カーボンオフセット」を導入した。今後も木の利活用を含め、団体や企業と連携して森林整備を進め、防災・減災へとつなげたい考えだ。

 松下氏は「サンブスギは江戸時代中期から挿し木造林の技術と共に受け継がれている。誇りを持って継承していきたい」と熱く語る。

 人口減対策では市のブランド力向上が有効と主張。脱炭素化のほか、ビーチやマリーナの国際環境認証「ブルーフラッグ」を得ている本須賀海水浴場などを「市の宝として次世代に引き継いでいかなければならない」と話す。

 最近では、災害時にペットと避難できる協定を関連団体と結び、注目された。脱炭素など社会が転換期を迎える中、「変わっていく時代に合った取り組みを展開していく」と笑顔を見せた。

 〔横顔〕旧山武町議、旧山武町長、県議を経て、18年に初当選。趣味はスポーツ観戦や映画鑑賞。

 〔市の自慢〕田園風景や海岸線などの自然。「この素晴らしさを後世に引き継ぐことが使命」。

(了)

(2022年12月16日iJAMP配信)

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