2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】「三つの取り組み」で暮らし支える=須田博行・福島県伊達市長 2022/12/19 08:30

須田博行・福島県伊達市長

 戦国大名伊達氏の発祥の地である福島県伊達市。2022年1月に再選を果たした須田博行市長(すだ・ひろゆき=64)は「これまで注力してきた移住・定住促進、子育て支援、健康増進の三つの取り組みを今後も着実に進めていく」と意気込む。

 市の人口は約5万6000人(11月1日時点)。64歳以下が減少する一方で65歳以上は増加を続けており、出生率のアップや生産年齢人口の確保が急務だ。これに対して須田氏は、若者の地元志向の高まりを強調。「進学などで一度市を出た若者たちが、再び地元で活躍する機運が高まっている。彼らに戻ってきてもらうには、働く場をしっかり作っていく必要がある」と語る。約14ヘクタールの工業団地の新規造成や県内最大規模となる商業施設の誘致などを進めており、計約3500人の雇用創出を見込む。

 また、市は「子育てするなら伊達市」をスローガンに掲げている。須田氏は、「核家族化によって、子育て世代が悩みを相談できる場がなくなっている」と指摘。他の自治体に先駆けて導入、推進している「ネウボラ」の有効性を語る。ネウボラとはフィンランド語で「相談の場」を意味する包括的な育児支援制度。市は16年、子育て包括支援センターを設立した。相談員が妊娠期から小学校進学までの相談支援や、支援機関への取り次ぎを一貫して対応。21年にはネウボラ推進課を新設し、支援範囲を義務教育終了にまで拡大した。ネウボラについて須田氏は「幅広い年代の子供を持つ親の、子育てに限らない悩みをなんでも気軽に相談できる窓口として非常に好評を頂いている」と話す。市が未就学児の親へ行ったアンケートでも、9割以上が「伊達市で子育てを続けたい」と回答しているという。

 誰一人取り残さない健康増進策にも力を入れる。須田氏は「市主体のイベントは参加のハードルが高く、健康増進に対する意識が高い住民しか集まらないという問題点があった」と指摘。そこで、近所の住民同士が集まり、講師も参加者が務める運動教室の開催を市内の町内会に打診、14年に五つの町内会で始まった。教室は、新型コロナウイルスの流行による一時中止後も住民らが自主的に再開。約130の町内会にまで拡大した。須田氏は「市民主体としたことで、本来の目的であった健康増進だけでなく、地域住民の交流の場としても機能するようになった」と分析。全町内会の約半数に当たる150を目標に開催地域の拡大をもくろんでいる。

 〔横顔〕宇都宮大農学部卒業後、1981年に福島県庁入り。農林水産部農村整備担当次長、県北農林事務所長などを歴任。18年に伊達市長に就任した。趣味はスキーや水泳などのスポーツ。健康のために始めたが、今では上達が楽しみに。

 〔市の自慢〕桃や柿、キュウリなどの農産物。逆境でも諦めず、物事に粘り強く取り組む市民たち。

(了)

(2022年12月19日iJAMP配信)

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