インタビュー 【トップインタビュー】デジタル、脱炭素など国の構想を積極活用=読谷山洋司・宮崎県延岡市長 2023/01/10 08:30

スマートシティ、デジタル田園都市、脱炭素先行地域など国が打ち出す構想を最大限に生かそうとしている宮崎県延岡市。読谷山洋司市長(よみやま・ようじ=58)は「延岡は陸の孤島と呼ばれるほど地理的ハンディを負ってきたが、デジタルの活用で解消し、さらに安心安全なまちづくり、地域経済底上げにも生かしたい。脱炭素を進めることは市民の誇り、地元産業の応援にもつながる」と強調する。
デジタル関連ではすでにいくつもの事業に着手しており、まず「大学病院から遠いなど地理的な問題で救えなかった命を一人でも多く救いたい」と話す。ドローンを活用する「空飛ぶ救急車」の実用化を見据え、市民の健康記録アプリとトリアージ(治療の優先順位付け)や搬送時の症状共有などをシステムで連動させ、より迅速な救急医療の実現を目指す。また、教育分野では「デジタルを使い遠くにいる先生と同時双方向の遠隔授業をすれば、素晴らしい先生方が我が市の先生になる」。科学、技術、工学、芸術、数学を統合したSTEAM教育、発達障害児や中山間地の教育支援など幅広い教育施策に生かす方針だ。
このほか、個人の行動データを基にした「ライフスタイル認証」などを災害時の避難対策に生かす。読谷山氏は「災害時の避難は『家』を起点に想定されているケースが多いが、絶えず人は移動しているので、いつどこに人が集中しているかが重要」として、実態に即した避難所設置、避難の在り方を探り「逃げ遅れゼロ」を目指す。データ分析はバス交通の再構築にも生かされる。
脱炭素先行地域に選定され、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の市営住宅建設などを準備しながら「地球環境貢献がシビックプライドとなる」と期待。一方、「脱炭素は世界のビジネスの流れ。延岡は旭化成や関連する地場企業の製造業のまちでもある。延岡が脱炭素のまちであることが、地元製造業が世界を相手にするために必要な取り組み」とする。デジタルや脱炭素の施策を展開する上で「著名な大学、企業と連携し、日々協議することで市職員のレベル、モチベーションが格段に向上している」と実感。さらに、「国は先進的政策の横展開を考えていると思うが、人口約12万人の延岡市の取り組みは、ほとんどの市町村への応用が可能だ」とロールモデルとして発信することにも意欲的だ。
〔横顔〕年末年始に市の「なんでも総合相談センター」の相談員を務めるなど市民のための事業には率先して取り組む。一方、スキューバダイビングのライセンスを持ち、コロナ禍が落ち着けば、多様な魚と美しいサンゴ礁に満ちた延岡の海を感じたいと願っている。
〔市の自慢〕日本一、世界一が多いこと。五輪メダリストを輩出しているのをはじめ、世界のスマートフォンの7割以上に延岡で作られた電子コンパスが入っているという。
(了)
(2023年1月10日iJAMP配信)