2023/令和5年
66日 (

インタビュー 【トップインタビュー】政治対立に左右されず=知念覚・那覇市長 2023/01/11 08:30

知念覚・那覇市長

 昨年11月、沖縄県全41市町村の束ね役とされる那覇市長に知念覚氏(ちねん・さとる=59)が就任した。38年間市役所一筋で、城間幹子前市長の下では副市長を務めた。「政治対立や基地問題に左右されない市政」を掲げ、前市政を支えた「オール沖縄」勢力とは距離を置く。政府の沖縄関係予算を巡る一括計上(一括交付金)方式の見直しには慎重姿勢だ。

 知念氏は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設の賛否を明かさない方針。移設反対を掲げる玉城デニー知事には「是々非々」と打ち出し、「県と市町村が連携して初めて県民のためになる」と強調。一方、一括交付金の獲得を巡っては国と県の協議が難航する中で政府と直談判に踏み切った。「県が困っているのをわれわれが手をこまねいていれば、結局県民が損をする。那覇市ができることをやる」と語る。

 島しょ県である地理的な不利性や米軍占領の経緯から、沖縄では県が使途を決められるよう内閣府が関係予算を一括計上している。一方、人口増など「元気な県」であることで、各種高率補助や優遇税制の継続を疑問視する向きもあり、知念氏も「沖縄は昔ほど特殊ではないとする風潮が相当強まっている」と率直に認める。

 ただ、一括計上方式の「見直しに突っ走った場合には痛い目に遭う可能性がある」と現時点では否定的だ。また、「領土・領海問題など国における貢献度も考えないといけない」と、安全保障環境の厳しさという新たな沖縄の特殊性に目を向けるよう求めた。

 市中心部には米軍那覇港湾施設(那覇軍港)が立地しており、浦添市への移設計画が動きだした。跡地利用は経済的に高い潜在性を秘める。来年度、国内の主要企業を対象に、進出可能性や見いだす魅力を聞き取り調査する方針を示し、予算を計上。結果を受けて経済効果を検討し、約1400人に上る地権者との合意を図りたい考えだ。

 コロナ禍や物価高に対応する短期的な重点政策として、1~3月の水道料金免除などに着手した。来年度当初予算案には、保育士の負担軽減策などソフト事業も計上した。沖縄経済をけん引する観光業は回復が見込まれ、「クルーズ船来港に合わせて目玉となる文化公演を設けるなど、文化振興を包摂する方法を考えたい」と構想する。

 長い行政経験から、国からの予算獲得における政治の力を痛感する。「基地のある沖縄は選挙で勝つのが難しく、力のある政治家が生まれにくい」。保革対立が色濃く残る沖縄では、国会議員が長く勝ち続けるのは難しい。「大きな力を持った政治家を産まないといけない」と力を込めた。

 〔横顔〕故翁長雄志元市長(前知事)の抜てきを受けて市の中枢を歩み、翁長氏が知事に転身した際には県知事選の政策のたたき台をまとめた。先の市長選では翁長氏次男と事実上の一騎打ちに。「翁長の名字は強いが、(対決は)宿命だ」と演説。現在も「翁長さんが何を求めてるのか、答えを追い求めていく」と語る。

 〔市の自慢〕戦後の闇市から始まった栄町市場。

(了)

(2023年1月11日iJAMP配信)

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