2023/令和5年
131日 (

コラム 【新連載】【職場が輝く知恵とワザ1】自分で職場を経営しよう 2023/01/20 11:00

藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹氏

静岡県藤枝市人財育成センター長 山梨秀樹

▽近づくリーダー・管理職ポスト

 「いよいよ私も『長』のつくポストに」「とうとう自分も管理職」…。知識と技量を生かして活躍する主査・主任や、部下の指導と現場の対応に多忙な主幹・係長の方々には、期待とともにさまざまな不安があると思います。仕事でも人間関係でも、気になったり心配だったりする気持ちを拭い去るため、今からやっておくべきことは何でしょうか。現場リーダーや管理職として配慮すべき点もあります。日々の心構えや、どんな働き方、過ごし方をすればいいのかも知りたいでしょう。

 新たな連載は、これらがテーマです。

▽「率いる立場」は面白い

 「責任が重くなるのは苦しい」「職場をリードしたり経営したりする自信がない」「これ以上忙しくなるのはつらい」などの理由で、現場リーダーや管理職を希望しない職員が増えていると聞きます。でもそれは実にもったいない!不安や悩みを打ち消す心の持ち方や行動パターンがあります。身に付ければ、あなたの気持ちも職場も明るくなり、役所の要職として働くのが面白くなってきます。

 相応のポストに就けば、職場を経営し、役所の経営に参画し、公務員としての理想を実現できるのです。以前は、あなたがやりたいと望んでも職位が足りず、できなかった仕事があったでしょう。昇進したからこそ可能なことは多く、それゆえ大きな達成の喜びもあります。情報量も格段に増え、担当者として見てきた景色とは別の、新たな世界も広がります。経験する前から嫌わずに、ぜひ、その面白さと楽しさを知ってほしいのです。

▽職員の最大の関心事は

 藤枝市役所の若手や中堅の職員に、異動の際に一番気になったり、関心が高まったりする点を聞くと、最も多く返ってくるのは「どんな仲間や上司と働くことになるか」という回答です。理由を問うと、仕事は万事チームワークで、いかに大変でも苦しくても、パートナーや上司次第で毎日の気分が全然違うからだと言います。どんな仕事でもやり遂げるが、職場で人間関係に悩むことなく、精神的に安定して働けるかどうかが重大な関心事なのです。実際、上司や仲間とのミスマッチで反りが合わず、日ごろのコミュニケーションなどで課題が生じ、元気な職員が精神的にすっかり落ち込んでしまうケースも毎年あるのではないでしょうか。

▽内示を受けたら…

 組織の人事は、上司も部下も自分で動かせません。内示を受け、新年度から現場リーダーや管理職になることが決まったら、現年度内にしておくべきことがあります。それは自分の部下の事前把握です。どんな年代、職歴か、得意な分野、未経験の分野は何か、部下同士の関係で注意すべき点はないかを、上司や人事関係者にそれとなく聞いておきます。実際の様子は付き合ってこそ分かりますが、事前の情報も参考になります。

 併せて大切なのは、あなた自身の「横顔」の整理です。自分の性格や長所と短所、職歴と得意な分野、苦手な分野を改めて書き出す「マイ・プロフィル」です。何を今さら、と思うかもしれませんが、部下と付き合うには、上司である自分自身の客観的な把握が大事なのです。部下もあなたを慎重に観察します。部下と正直に付き合い、穏やかで心安い関係をつくるには、まず自分自身を謙虚に知ることです。

 もう一つ。先輩のリーダーや課長の中から、相談できる相手を探しましょう。仕事ができるよりも、人を率いる力のある、若手に評判のいい先輩の中から選びます。やり手で業務実績があっても、部下にさっぱり人気がない管理職もいます。若手は仕事の辣腕(らつわん)ぶり以上に「人柄」や、察しと思いやりの「ポケット」が深い上司にほれていきます。相談相手にすれば、得られることは多いはずです。

▽自分がつくる「空気」が力

 現場リーダーや管理職の醸し出す空気が、職場の雰囲気もイメージも決めていきます。自分のちょっとした行動パターンで、職員が安心して思いや提案を語れる職場ができるようになります。それには年度当初からのあなたの動きがとても大事。幾つか例示しましよう。

 まず、声を上げて笑うことです。それはリーダーとしての「公務」であり、職場経営には不可欠です。「率いる人」の笑い声が、明るい職場を生み出します。

 次に、部下をねぎらうこと。これはリーダーとしての「習慣」です。会話の後に「ありがとう」と言えばいいのです。「心では感謝している」と酒の席で部下につぶやくだけでは足りません。思っているだけではその場で相手に伝わらないのです。

 雑談も、隙間の時間の活用として、雰囲気づくりに効果があります。何を話すかは工夫次第ですが、例えば成功談より失敗談の方が盛り上がります。特に課長ともなれば、年齢的にも経験値からも若手から見れば遠い存在。その人から、失敗して大恥をかいた話や、危うく処分対象になりかけた秘話を聞けば、若手も何か妙な自信さえ感じるようになります。あなたの人柄が分かり、部下との距離が縮まります。

 いずれも自分なりの言葉でいいのです。受け止める部下も心で受けるのですから、あなたの気持ちが伝わればいい。それは、背後にある「思いやり」ということです。他の現場リーダーや管理職の所作を観察して伝え方を学ぶのも一興です。マネジメントにはさまざまな形や色の出し方があるのです。(了)

◇山梨秀樹(やまなし・ひでき)氏のプロフィル
1983年静岡県庁に入り、旧総理府(現内閣府)地方分権推進委員会事務局、静岡県総務部合併支援室、藤枝市行財政改革担当理事、同市副市長、静岡県理事(地方分権・大都市制度担当)などを経て、2019年4月から藤枝市理事。同年6月、人財育成センター長に就任。人財育成に関する論文、寄稿などを発表するほか、公務員の「言葉力」をテーマにした研修・講演の講師などを務める。

【職場が輝く知恵とワザ】

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