インタビュー 【トップインタビュー】鉄道延伸で「まちづくりを加速」=上島一彦・大阪府箕面市長 2023/01/13 08:30

山が身近で自然豊かな住宅都市として知られる大阪府箕面市。大阪市中心部に直結する鉄道が2023年度末、市内に延伸し、アクセスは格段に向上する。上島一彦市長(うえしま・かずひこ=64)は「(鉄道延伸を機に)まちづくりを加速させていく」と語り、新設される駅周辺をヘルスケアの拠点と位置付けるなど整備に力を注ぐ。
鉄道の延伸で、市内に二つの駅ができる。その一つ箕面船場阪大前駅周辺では21年5月、大阪大学が指定管理者の市立船場図書館がオープン。大学の蔵書を含む約71万冊を所蔵する規模で「唯一無二の図書館。小中学生もアカデミックな環境で学習できる」と胸を張る。船場生涯学習センターも大阪大が指定管理者で、大学との連携強化を進める。
健康分野の拠点にもなる計画だ。大阪大などと協力し、予防医学や健康増進を目的とした「関西スポーツ科学・ヘルスケア総合センター」(仮称)の設立を検討。「ここで市民の総合健診を行い、得られたデータを基に、健康な生活に向けた助言をする」考え。豊富なデータは市の健康・福祉施策にも生かす方針だ。
近隣には27年度、新たな市立病院の移転開院も予定。民間病院との再編統合で病床増を目指し、「断らない救急を実践したい」と意気込む。
25年開催の大阪・関西万博で共創パートナーになった箕面市。「(新駅周辺は)万博の実証フィールドになる。閉幕後も万博のレガシーをまちづくりに生かしていく」と前を見据える。
鉄道延伸で利便性が高まり、定住人口の増加が見込まれる。「住み続けてもらうため、教育や子育て日本一を掲げている」と、小中学校9年間を通じた教育を重視する。学力や体力、生活習慣について、市立小中学校の全児童生徒への継続調査で経年変化を把握。教室に設置したカメラで撮影した授業の様子を人工知能(AI)で分析し、データを駆使した授業の質向上に努める。
新たな観光戦略にも乗り出した。紅葉の名所として知られる箕面大滝があるが、来訪者は秋に集中する。そこで「年間を通じて観光客を取り戻す」と公民連携の企画に着手。1月は市内の寺を周遊する開運巡り、2月には貸し切り列車を活用したツアーを用意。「春夏秋冬を通じて客を増やす。インバウンドも取り込む」と魅力ある企画の投入に意欲を見せる。
〔横顔〕民間企業を経て、箕面市議2期、大阪府議を4期務め、20年の市長選で初当選。休日は近くに住む孫と公園やイベントに出掛ける。
〔市の自慢〕大阪市中心部まで電車で約30分ながら、市内に約963ヘクタールの国定公園があり、田園風景も広がる。府内唯一のユズ生産地。
(了)
(2023年1月13日iJAMP配信)