インタビュー 【トップインタビュー】「三重苦」乗り越え、その先へ=蒲島郁夫・熊本県知事 2023/01/16 08:30

2016年熊本地震と20年7月豪雨災害からの復興、新型コロナウイルスの「三重苦」に取り組む熊本県。来年4月に4期目の任期を終える蒲島郁夫知事(かばしま・いくお=75)は、「これまでの総仕上げにふさわしい1年にしなければならない。地震、豪雨、コロナの三つの困難を乗り越えた先の地方創生の取り組みを加速させる」と意気込みを語る。
「目に見える形で創造的復興が進んできた」と総括するのは、4月で被災から7年を迎える熊本地震だ。仮設住宅は、17年5月末時点で、2万255世帯が入居していたが、22年11月末に、益城町の8世帯のみとなり、23年3月には閉鎖される。
また、「復興のシンボル」の阿蘇くまもと空港の新ターミナルビルが今年3月オープンし、夏頃には南阿蘇鉄道の全線で運転が再開されるなど、「目指してきた創造的復興の姿に大きく近づく1年となる」と話す。
一方、7月豪雨災害における住居の再建は「熊本地震発災後の同じ時期よりも速い」と強調する。21年1月時点で、仮設住宅に1814世帯が入居していたが、22年11月末には、半数以上の1103世帯が退去した。23年度に、災害公営住宅のほとんどが完成することから「住まいの再建はさらに加速する」と復興への自信を見せる。
新型コロナウイルスの第7波では強い行動制限をかけず、社会経済活動を維持。全数届け出見直し後は、発生届け対象外の患者のフォローアップ体制を強化した。
ただ、復興や新型コロナ対応に追われるだけではなく、「その先にある地方創生の姿を考えなければいけない」と見据える。
特に重視するのが、経済分野の取り組みだ。県内では、半導体受託製造の台湾積体電路製造(TSMC)が新工場を建設しており、24年末までに生産が始まる。半導体関係の人材の育成・確保、交通渋滞対策、環境保全などを課題に挙げ、「国策ともいえるTSMC進出のビッグプロジェクトが円滑に進むよう、迅速に取り組む」と語る。
22年度に、菊池市と合志市の中九州横断道路沿線で、それぞれ約25ヘクタールの新規工業団地の整備に着手。「農業と工業のベストバランスを取りながら、限りある土地を有効活用していくことが重要」と指摘する。「企業のニーズに円滑に対応し、誘致の機会を逃さないように用地を確保していきたい」考えだ。
〔横顔〕影響を受けた著書は、マルクス・アウレリウスの「自省録」。「日々をどう生きるか。為政者として大きな示唆を受けた」という。座右の銘は「人生は夢」と「逆境の中にこそ夢がある」。
〔県の自慢〕農業産出額は全国5位(21年3月末時点)。温暖な海岸地域や、阿蘇地域の高冷地で自然を生かした作物が生産されている。
(了)
(2023年1月16日iJAMP配信)