インタビュー 【トップインタビュー】「想定外」を「想定内」に=久元喜造・神戸市長 2023/01/17 08:30

17日で阪神大震災から28年を迎えた神戸市。さまざまな災害に備えるため、津波・高潮対策や大容量送水管の整備などに取り組んできた。久元喜造市長(ひさもと・きぞう=68)は、「『想定外』を『想定内』にすることが大きな視点。想定外の大災害が起こらないような努力が続けられた」と振り返る。
次なる災害を「想定内」のものとする事業の一つとして、津波・高潮に対応する防潮堤の整備が2015年度に完了。「市民の目には触れない非常に地道な事業だが、間違いなく効果を発揮する」と強調する。南海トラフ地震などによる津波に対しても「水門を遠隔で開閉する仕組みをはじめ、最新技術を使った災害対策をパイオニア的に導入することが大事だ」と語る。
震災当時は、市内全域で断水が発生。直後から大容量送水管の整備に着手し、15年度に完成した。全市民の12日間分の生活用水を貯留することが可能だ。
市役所内では当時の記憶の風化も懸念される。昨年4月時点で、市職員の約68%が職員として震災を未経験。「行政の中での記憶や経験の継承は災害対応力強化でも非常に重要」と指摘する。
こうしたことも踏まえ、市は東日本大震災の被災地などに職員を派遣している。「震災を経験したベテランと震災を知らない若手がチームを組み、一緒に汗を流す。被災地への支援にもなるし、災害対応力を身に付けることにもなる」と語る。
市出身だが、地震発生時は札幌市の財政局長を務めていた。予算編成の責任者で神戸にすぐに戻れず、「テレビを見ながら泣いた。こういう時に、生まれ育ったまちの役に立てないことに罪の意識を感じたし、情けない思いがした」と振り返る。
まちづくりの現状については「3年近い新型コロナウイルスとの闘いの中で、未来に向かって持続可能なまちをつくる努力が続けられ、それが少しずつ姿を現しつつある」と語る。昨年には、震災で大きな被害を受けた市役所2号館の再整備事業者が決定。市庁舎やホテルが入る複合施設が建設される予定だ。中心部・三宮の再開発も進み、「たくさんの人が訪れて、ショッピングなどを楽しむにぎわいのあるまちにしたい」と力を込める。
〔横顔〕総務省自治行政局長などを経て、13年から現職で現在3期目。指定都市市長会長も務める。
〔市の自慢〕市民力。コロナ禍での医療従事者への支援ファンドには、全国最高レベルの募金が集まった。「震災を乗り越えることで培われた市民力がコロナ禍でも生かされている」。
(了)
(2023年1月17日iJAMP配信)