2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】日本最南端スキー場の再開・活用に注力=小迫幸弘・宮崎県五ケ瀬町長 2023/01/18 08:30

小迫幸弘・宮崎県五ケ瀬町長

 「人が集まるまちづくりに力を入れ、観光と雇用をうまくリンクさせたい」と語る小迫幸弘・宮崎県五ケ瀬町長(こさこ・ゆきひろ=60)。昨年の台風被害の影響で今季の営業を断念したスキー場を来季には再開させ、徐々に伸びる高速道路の効果を生かすほか、隣県への大型半導体工場進出などの好機を逃さずに集客、活性化策を進める構えだ。

 「五ケ瀬ハイランドスキー場」は1990年に開業。日本最南端のスキー場として知られる。現在は町100%出資の第三セクターが運営。赤字を計上すると廃止論議が起こることもあるが、小迫氏は町職員時代、スキー場が存在するメリットや意義を粘り強く説いてきた。

 小迫氏は「スキー場ができるまで、五ケ瀬町は全くネームバリューがなかった。そもそも観光という発想や観光振興計画もスキー場の構想が生まれてからの動き。スキー場は町外の人が目的を持って来てくれる初めての施設となった」と振り返る。地元経済への貢献について「企業誘致が簡単にはできない中で、スキー場関連で70~80人の雇用を生むことができた。スキー客に泊まってもらったり、スキーとは縁のなかった店舗が道具のレンタル業などに乗り出したりした例も多い」と実感してきた。

 ところが2022年5月に町長に就任して間もない9月に台風14号が宮崎県を襲い、道路や農業施設が被災。スキー場自体は無事だったが、スキー場に至る道が大きく損壊し今季の営業はできなくなった。小迫氏は「台風で復旧に約30億円も掛かる大きな被害が出た。まずは、生活、農業関連の早期復旧に全力を尽くしたい」と話す。一方、「営業を断念してから、スキー場に関わってきた一軒一軒を回ると、これまで冬季の収入としていかに大事だったか感じた」とスキー場の重要さを再認識。来季の確実な営業再開を心に誓っている。

 生活や農業関連の復旧、買い物難民支援など喫緊の課題に力を入れながらも、来季以降はスキー場を絡めた攻めの姿勢で臨むつもりだ。小迫氏は「九州中央自動車道が五ケ瀬町近くまで伸びてきており、熊本県がぐっと近くなっている。台湾の半導体大手TSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出で多くの人が動くので集客のチャンス。高速道路がさらに伸びれば通勤圏内となる可能性もある。また、大分県のスキー場との連携、九州南部からの集客にも力を入れる」と前向きだ。

 〔横顔〕職員時代に、1957年発行の町広報誌第1号から数十年分を読破した経験を持ち、昔の職員の志の高さを今の職員に伝えて刺激する。一方、町長室で若手職員とテーマを決めて語り合う時間を設け積極的に耳を傾ける。若手の助言で、フェイスブックを使った自らの発信を、新たにインスタグラムを連動させて強化したことも。ベストスコア77のゴルフをほぼ封印し、週末は原付きバイクで町内を走り回り町民と話を弾ませる。

 〔町の自慢〕ユネスコの無形文化遺産に登録された風流踊の一つ「荒踊」。一生懸命受け継いできた地域の宝だ。

(了)

(2023年1月18日iJAMP配信)

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