インタビュー 【トップインタビュー】普天間返還合意から27年、「我慢の限界」=松川正則・沖縄県宜野湾市長 2023/01/18 08:30

米軍普天間飛行場が市街地の中央に横たわる沖縄県宜野湾市。1996年の返還合意から今年27年を迎えるが、市街地の頭上を米軍機が飛び交う日常が変化する兆しはない。松川正則市長(まつがわ・まさのり=69)は、同飛行場の名護市辺野古移設を巡り県と政府が対立するはざまで、「市民の厳しさがなかなか察してもらえない」と頭を悩ませ、「これ以上我慢はできない。辺野古の工事を早く進めてほしい」と訴える。
2004年、沖縄国際大学に米軍の大型輸送ヘリコプターが墜落した。日米両政府も危険性は十分に認識するが、学校や住宅街への部品落下などは後を絶たない。
18年の初当選時、辺野古移設の是非を示さなかったが、昨年9月の市長選では初めて「容認」を掲げて再選した。同日実施の知事選では、移設に反対する玉城デニー氏が圧勝したが、市内では移設容認の対立候補の得票が玉城氏を上回り、「世界一危険」とも称される飛行場を抱える市民の切実な思いを浮き彫りにした。
軟弱地盤が存在する辺野古崎北側の埋め立て予定海域は、防衛省の設計変更を県が不承認としたことで手付かずのままだ。一方の南側では陸地化が完了しており、松川氏は駐機場整備による米軍機の「段階的移設」を提唱する。「騒音も危険性も理屈上は減らせる」ためだが、県が移設反対を堅持しているためとして、政府の反応は鈍い。
辺野古の工事が完成するには、北側の埋め立てに着手してから12年かかるとされる。だが、県の不承認などで不確定要素があるとして、政府も返還期日は示さない。市側から期日を区切るよう求める声も一部からあるが、「今の段階ではまだ」と否定的で、あくまで政府と協調する構えだ。
負担軽減の方策について、「騒音減や県外訓練増など、いろいろできることがある」と政府に要請を重ねてきた。政府と県、宜野湾市で構成する「負担軽減推進会議」の本会議は4年近く開かれていない一方、官房副長官や副知事などで構成する「作業部会」が近く開催される見込みだ。
辺野古移設反対を掲げる「オール沖縄」県政は昨年9月、3期目に入った。政府との訴訟を続ける県の手法を、「普天間の固定化につながるだけだ」と批判。姿勢がかたくなだとして、「県外・国外移設を言い続け、少しでも見通しが立ったのか。市の方向性と全くかみ合わず、市の必死の訴えが届いているとは感じられない」と主張する。
〔横顔〕野球好き。キャンプを張る横浜と、昨年の日本シリーズでも好投した市出身のオリックスの宮城大弥投手を「二本立て」で応援する。
〔市の自慢〕市街地の海岸ながら、サンゴを見られるシュノーケリングスポットの穴場。
(了)
(2023年1月18日iJAMP配信)