インタビュー 【トップインタビュー】北陸道SA利用者400万人を町へ=岩倉光弘・福井県南越前町長 2023/01/19 08:30

福井県のほぼ中心部に位置する南越前町は、かつて北国街道の宿場町「今庄宿」で栄えた北の交通の要衝だった。岩倉光弘町長(いわくら・みつひろ=68)は北陸自動車道で県内唯一のサービスエリア(SA)に併設された道の駅を起点に、町への誘客を進めている。また、昨夏の豪雨災害からの復興にも力を尽くす。
町では2021年10月、北陸道南条SA上り線に併設する道の駅「南えちぜん山海里」がオープンした。高速道路、一般道の両方から入れる「ウエルカムゲート」を整備。SAと道の駅が並ぶ施設は珍しく、国土交通省のモデル事業に採択された。
モデル事業では、道の駅での物販の売上手数料を、SAを運営する中日本高速ではなく町が受け取れる利点がある。地元の人たちが作った弁当や刺し身を扱っており、「地元からは『よく売れている』と聞く」と喜ぶ。
南条SAの利用者数は年間約400万人と、県内屈指の観光地である東尋坊と県立恐竜博物館の年間訪問者の合計を大きく超える。道の駅で買い物をするだけでなく、スマートICから町に来て観光してもらうのが理想だ。「400万人を引っ張る力が(町に)あるか」と自問し、観光、産業系の部署で培った手腕を生かし、町を売り込む。
「日本遺産が二つもある」のが売りだ。一つ目は北前船主の右近家、中村家の住宅などから成る船主集落。寄港地の敦賀市と協力して登録にこぎつけた。二つ目は鉄道遺産である旧北陸線の山中トンネルなどの遺構で、敦賀市、滋賀県長浜市と連携して指定された。モデル事業も日本遺産も、積極的に指定を取りにいった成果だ。
自身が旧南条町職員時代に手掛け、1993年に開園した「花はす公園」は、今や世界のハスの花が集まる観光名所に。こうした努力が実り、道の駅はオープンから9カ月で100万人が利用した。「思ったより遅かった。コロナの影響がなあ…」と少し悔しげだが、それでも目標の120~130%のペースだという。
22年8月5日の豪雨で、町を流れる川が氾濫し、今庄地区を中心に200棟以上が被害に遭った。激甚災害に指定され、いまだ自宅に戻れない人もいる。5カ月ほどたち、道路などの災害査定にめどが立ったが、「復興には3年はかかる」。人口減少、高齢化など既存の問題に加え、災害からの復興が、約2年となる残り任期の課題となった。
〔横顔〕旧南条町役場職員から合併後の南越前町の副町長を経て、17年町長に初当選。現在2期目。上司だった旧南条町長の金言「自分が幸せにならな、家族も町民も幸せにできん」が理念。趣味は自宅菜園で、トマト、キュウリ、なす、何でも作るが鳥獣対策に悩む。
〔町の自慢〕自然と歴史豊かな「山海里」。合併前の今庄町の山、河野村の海、南条町の里から成る。二つの日本遺産に重要伝統的建造物群の今庄宿、日本一の花はす公園が見どころ。
(了)
(2023年1月19日iJAMP配信)