インタビュー 【トップインタビュー】布石、輝く年に=山口祥義・佐賀県知事 2023/01/24 08:30

任期満了に伴う2022年12月の佐賀県知事選で3選を果たした山口祥義知事(やまぐち・よしのり=57)。新型コロナウイルス感染症や水害対策に追われた22年を「備える年」と振り返る。23年は「打った布石たちが輝きだして、皆がワクワクするような年にしたい。良い方向に転じていく年に」と意気込む。
選挙戦でも大きく掲げた県立大学の設置について、山口氏は、理系と文系の融合型学部の創設や、経営に対する理解を備えた、実践的なデジタル人材を輩出できる大学をイメージしているという。「単に技術だけでなく、それをどう応用していくのか、社会の動きがどうなっているか、その上でどのような形で経営していくかが分かれば、かなり実質的な議論ができる。部分だけを育てていくというよりは、そういった意味で実践的な大学」。地元企業や県内に研究施設を置く企業などに送り込み、即戦力になることを期待する。
県立大の設立で、県内就職者数の増も狙う。県はすでに高校卒業生の県内就職率を65%以上に引き上げる「プロジェクト65」や、UIJターンの積極的受け入れ施策などを展開し、県内就職者の確保に奔走している。「年間3400人の大学進学者の中で、約600人しか県内に受け入れられない状況。2割にも届いていない」と分析、大学新設による定員増に、県内就職率の改善への期待も寄せる。
2期目の任期終盤には、陸上自衛隊の輸送機「オスプレイ」の佐賀空港への配備を巡る議論も進展。昨年11月に県と地元漁協が結ぶ覚書が見直され、条件付きで同空港の自衛隊との共用が認められた。
12月には空港周辺の住民向け説明会も実施され、初日は山口氏も壇上に上がり質疑に応じたが、住民からは覚書見直し後の開催となったことへの不満や、配備計画への不安、国への不信感を訴える声が多く上がった。
山口氏は、機体や駐屯地施設の運用について、県も具体的なイメージを持つべきだと話す。「(千葉県の)木更津ではどのような状況で運用されているのかなど、われわれも一つ一つ調べられることは調べる、防衛省に確認することは確認する、ということはずっと続けていく」と語った。
また、昨年9月には、西九州新幹線が武雄温泉―長崎間で開業。いまだ新鳥栖―武雄温泉間の整備方式を巡る県と国の協議に決着がつかず、全国最短区間での開業となった。山口氏は開業効果を地域振興に結び付ける上で、「いかに観光客を入れながら交流するような場所をデザインするかがポイント。人は引かれている場所に移動する。引かれる場所をつくることに注力する」と、体験型旅行の拠点整備に意欲を見せる。
このほか、大型多目的施設「SAGAアリーナ」のオープンを5月に控えるなど、県は大きな転換期を迎える。山口氏は「23年はいろんなものが動きだす年になる」と期待に目を輝かせる。「前年に備えたものが動きだし転機になる。自分自身も初心に帰り、心機一転頑張りたい」と決意を新たにした。
〔横顔〕1989年自治省(現総務省)入り、同省過疎対策室長などを経て15年1月から現職。
〔県の自慢〕新たな発見が続く吉野ケ里遺跡や肥前名護屋城の「黄金の茶室」、嬉野のティーツーリズム、有明海での干潟体験など、「唯一無二」の体験ができる。佐賀牛や佐賀ノリ、呼子のイカ、竹崎カキ、日本酒など世界に誇る「食」。
(了)
(2023年1月24日iJAMP配信)