インタビュー 【トップインタビュー】廃校活用で交流人口増目指す=湯本隆英・長野県中野市長 2023/01/25 08:30

長野県北部に位置する中野市の湯本隆英市長(ゆもと・たかひで=64)は就任から2年がたち、「1年目の点が、やっと線になって広がっていくイメージだ」と語る。廃校となった小学校を利活用する子育て支援施設と世代間交流施設が今年、相次いでオープンする。少子高齢化が進む中、施設を通じて「交流人口、関係人口を増やして地域を活性化させる」と意気込む。
市は2016~25年度の間に公共施設などの延べ床面積20%縮減に取り組んでいる。廃止した小学校5校のうち2校を売却し、1校は社会福祉法人に賃貸して障害者施設とした。残る2校は子育て支援施設、世代間交流施設として整備する。「思い切って削減するべきものは削減し、活用できるものは地域の交流施設に変えていく」と強調する。
子育て支援施設は4月にオープンする。子育て中の人や孫を連れた高齢者が「子供が泣いても騒いでも、気兼ねなく一日過ごせる施設」を目指す。施設内には大型遊具を設置し、子供が思う存分体を動かして遊べる場とする。子育てしやすい環境をつくり、移住の増加にもつなげたい考えだ。
体育館は多目的運動場とし、各種イベント会場などとして利用できるようにする。市はシャインマスカットといったブドウやリンゴなどの産地でもある。施設には校庭が残り、国道にも近い好立地のため、「季節によってはテントを張って(観光客らに)地元農産物の販売もできる」と話し、交流手法も模索する。
もう一つの廃校は10月にスポーツなどを通じた世代間交流施設として生まれ変わる。校舎を解体して400メートルトラックを整備。公認の陸上競技大会を開ける施設ではないが、トラック内には8人制サッカーもできる人工芝の多目的グラウンドを用意する。地域住民による利用のほか、市外、県外の高校生や大学生に夏季トレーニングに使ってもらいたい考え。「地元の子供たちと市外のスポーツ団体の皆さんが交流を深められる施設にしたい」
市民会館のリノベーションも進めており、24年春にオープンする予定だ。唱歌「故郷」を作詞した高野辰之や「シャボン玉」を作曲した中山晋平、数々の映画音楽を担当した作曲家の久石譲さんは市の出身で、「音楽は中野市の文化の背骨」と話す。
音響性能を高めた大ホールや多目的ホールのほか、美術品などを展示できるスペースも設ける。市出身で活躍中の漫画家もいるため、「過去のものを展示することも必要だが、今活躍している若い方の作品を展示する場所にするのも面白い」と語り、期待を膨らませている。
〔横顔〕趣味は読書と映画鑑賞。お気に入りの映画は「未知との遭遇」「E.T.」などスティーブン・スピルバーグ監督の作品。ラブロマンスも好きだという。
〔市の自慢〕多くの音楽家や芸術家を輩出している。「四季がはっきりしているから、感性が育まれ、情緒が生まれるのかな」
(了)
(2023年1月25日iJAMP配信)