2023/令和5年
129日 (

インタビュー 【トップインタビュー】政令市新制度の導入議論を=川勝平太・静岡県知事 2023/01/25 08:30

川勝平太・静岡県知事

 静岡県の川勝平太知事(かわかつ・へいた=74)は、地方行政の在り方について「できる限り基礎自治体に権限を譲りたい」と話す。政令指定都市の静岡、浜松両市について「面積が広いのでインフラ整備が大変だ。なかなか自立が難しい」と課題を指摘。県が政令市に財源と権限を移譲する「特別自治市」や「総合区」など新たな制度の導入に理解を示し、「議論ができるならいつでもオープンだ」と話す。

 過去に川勝氏は、静岡市を廃止して特別区に再編する「静岡県都構想」を提唱したが、同市が反対して議論は中断した。県内の2政令市については「なるべくできることはやってもらいたい」と話すが、「県内の政令市は、財源も技術者も不足している。港も県が運営している」と説明。行政区長の権限を強化する「総合区」制度についても「いろんなことができる」と評価する。静岡、浜松両市では4月の市長選に現職が不出馬を表明しており、市長交代により、「今度は議論できるのではないか」と期待を示した。

 一方で、県の分庁化についても進める方針で「県と同じ権限を持っている市が同じ場所にいると具合が悪い」と訴え、「県庁を分庁化して、可能なものは、東部や(西部の)大井川流域に移して基礎自治体と一緒に広域的にできることをやっていけばいいのではないか」との考えを示した。

 リニア中央新幹線静岡工区の着工中断の問題では、生態系や水資源について議論が続くが、神奈川県に建設予定のリニアの関東車両基地の用地取得が進んでいないと指摘し、JR東海が山梨県との県境で実施を目指す高速長尺ボーリング調査についても「調査と強調するが、水抜き工事の一環だ」と認めない考えだ。

 同社は大井川源流部の田代ダム(静岡市)の水で発電している東京電力に依頼し、ダムの取水量を減らすことで、リニア工事で生じる湧水量と同量を大井川に戻すと提案したが、川勝氏は「東電から説明はない。筋が違う。JR東海は決定権を持っていない」と話し、「水が戻ってくるならいいと言っている人もいるが、間違いだ」と述べる。トンネル工事で生じた残土の盛り土についても「本当に安全性が確保されているのか」と疑問を呈す。

 昨年は牧之原市のこども園で通園バスに園児が置き去りにされて死亡する事件や、裾野市の私立保育園で園児暴行事件が発生。川勝氏は「二度とこういうことがあってはいけない」と述べる。バス点検や保護者連絡などのマニュアル整備や安全装置の設置といった対策を行う考えを示し、「子供に対してできる限りの支援をする」と力を込めた。

 〔横顔〕「一番好きなのは宮沢賢治の精神だ」と話し、「雨ニモマケズ」の詩を暗唱する。県政運営では明治維新の指針となった「五か条の御誓文」の「万機公論に決すべし」を重視している。

 〔県の自慢〕今年、世界文化遺産登録から10周年を迎える富士山。知事就任後、執務室の机と椅子を富士山が見える場所に移した。「富士山に見られている。いつも手を合わせている」と話す。

(了)

(2023年1月25日iJAMP配信)

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