インタビュー 【トップインタビュー】県民との対話に注力=阿部守一・長野県知事 2023/01/27 08:30

長野県の阿部守一知事(あべ・しゅいち=62)は、昨年9月に4期目に入り、「対話と共創」をテーマに県政を進める。「課題解決には行政だけでも、県民の力だけでもできない部分がある。共創を意識し、力を合わせて県政を進めていきたい」と今後の抱負を語る。4期目は、県内77市町村を全て回る「県民対話集会」に着手し、自身の耳で聞いた課題を県政に反映させるよう努める。
3期目の課題として県民との対話不足を挙げていた阿部氏。4期目開始直後から県内をめぐり、2022年末で22市町村での集会を終えた。阿部氏は「(直接聞くと)地域の取り組みや課題がリアリティーをもって伝わる」と効果を実感。集会を通じ、県民からは「教育の選択肢が少ない」「子育てにお金が掛かる」などと共通した意見が聞かれたという。阿部氏は「女性や若者に選ばれる県づくりを進めていかなければならない」とし、子育て支援などをさらに充実させる考えだ。
県民の声を県政に反映するため、4期目の公約として掲げた「県民参加型予算」の試行も進めている。県民が事業を提案し、別の県民から成る「県政モニター」が審査などをする「提案・選定型」と、提案者が県職員らと共に事業を立ち上げる「提案・共創型」の2種類を設定。「まさに対話と共創の具現化。最初は手探りだが、持続可能なものにしていきたい」と話す。選定型の事業は、23年度の当初予算に反映する方針だ。
インバウンド(訪日客)の獲得も課題だ。県内では、白馬村などのスキー場にウインタースポーツのために訪れる外国人観光客が多く、阿部氏は昨年10月末、インバウンド獲得に向けオーストラリアを訪問。航空便の減少や燃料費の高騰などで飛行機の予約が取れないことが課題の一つだとする。阿部氏は、12月に都内でANAホールディングスの片野坂真哉会長と面会し、増便などを要望。県内での受け入れ体制の整備も進める。
4期目の公約として、観光税の導入検討を挙げていた。「観光の財源は特別に設けられていない。良い環境を整備するため、観光客に一定程度の財源を負担してもらうことは不自然ではない」との考え。県は昨年10月、庁内にプロジェクトチームを立ち上げた。年度内にも検討結果を取りまとめる方針だ。
〔横顔〕1984年自治省(現総務省)に入り、2010年9月、長野県知事に就任した。マイブームは「県民対話集会」。各集会には「地元が好きで地元を良くしたいと思っている人たちが必ずいる。元気をもらえます」と笑顔を見せる。
〔県の自慢〕多くの観光地があり、景観や新鮮な野菜、果物が豊富で「普通の暮らしがプレミアム」だ。
(了)
(2023年1月27日iJAMP配信)