インタビュー 【トップインタビュー】出会いを応援するまちに=伊藤徳宇・三重県桑名市長 2023/02/01 08:30

全国の自治体が人口減少対策に知恵を絞る中、三重県桑名市は昨年、結婚希望者の出会いの支援策としてマッチングアプリ大手との連携を決めた。伊藤徳宇(いとう・なるたか=46)市長は「結婚や出会いで大事なのは誰かが後押しすることだ」と指摘し、地域全体で出会いを応援する雰囲気づくりも目指す考えも示した。
桑名市は、名古屋市の中心部に電車で30分圏内と利便性が高く、ベッドタウンとして発展してきた。ところが、人口は2015年の14万3000人をピークに減少に転じ、22年2月に14万人を切った。「地理的に優位性が高い地域も、なりふり構っていられない時期に入った」と危機感をあらわにする。
これを受け、人口を14万人台に戻す「リバウンドプラン」を昨年開始。マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」を運営するエウレカ(東京都港区)と連携し、市民にアプリを利用するきっかけを提供する取り組みは、その一環となる。
連携のきっかけは「若手職員からマッチングアプリが普通に使われていることを教えてもらった」こと。結婚式場の関係者からも、なれ初めの3割はマッチングアプリと聞き、「衝撃を受けた。世の中と行政のギャップに気付いた」という。
マッチングアプリを巡っては出会った人同士でトラブルも発生している。デメリットには対応する必要性を認識しつつも、そういった懸念を理由に「ペアーズと連携せず、出会えない人生を歩む人がいるなら、チャレンジする方向を選ぼうと思った」と話す。市は来年度にアプリの安全な利用方法を伝えるセミナーを開催する計画だ。
地元企業と連携し、ペアーズで出会った人たちが市内の施設や飲食店でデートする時の支援策を提供する構想もあり、「地域みんなで出会いを応援する雰囲気がつくれればいい」と話す。
このほか、リバウンドプランでは外部からの流入促進策として企業誘致を強化。定住者を増やすため、不動産購入者への支援策も検討中だ。
子育て家庭を中心に、市内に定着してもらうための環境整備にも力を入れる。来年度には子ども医療費の助成対象を拡大し、所得制限も撤廃する。「『子育てするなら桑名だ』とぶっちぎれるような取り組みをしたい」と意気込む。
12年に市長に就任し、行財政改革に力を入れてきた。「絞る、削る改革」や公民連携によって、一時99.7%となっていた経常収支比率は、昨年度85.8%に改善した。今後は「地域でしっかり稼げるかが市民ニーズに応えられるかどうかに直結する」と、企業誘致などさまざまな手法で「桑名が豊かになるように注力したい」と話す。
〔横顔〕新型コロナウイルス禍で外食が減った分、自宅で料理する機会が増えた。レシピ通りに作るのが「ストレス解消になっている」。
〔市の自慢〕遊園地「ナガシマスパーランド」などの観光施設があり、「日本で一番ジェットコースターが多い市だ」と胸を張る。
(了)
(2023年2月1日iJAMP配信)