2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】頑張る人を応援したい=手島旭・北海道芽室町長 2023/02/13 08:30

手島旭・北海道芽室町長

 ゲートボール発祥の地で、日高山脈を背に広大な農地が広がる北海道芽室町。手島旭町長(てしま・あきら=56)は「町の魅力は『自然』『農業』『食』『人』の四つで、特に人だ」と強調する。

 芽室町や帯広市などを含む十勝地方は明治時代、民間主導で開拓が進められ、パイオニア精神が強い土地柄と言われた。芽室では今も健在らしく、「イベントを開催したり、新たな作物やワインを作ったり、町の活性化のため何かをやろうという人が多い。頑張る人を手助けしたい」と語る。

 昨年秋には、30代中心の有志が主導したイベント「かちフェス」が開かれた。「アイヌ文化と食、音楽、サウナを融合したイベントを行いたい」との要望を受け、実現したが、町の関与は最小限にとどめた。約30の飲食店が出店し、2日間で計1万人の来場者を集めた。

 町の活力を高めるには若者の協力が重要だと考える手島町長。「子どもたちのアイデアも町づくりに生かしたい」として中高生を対象に「ジモト大学」をつくった。地元特産のピーナツを使った菓子の開発やクリスマスイベントの企画を手掛けてもらった。人口減少や高齢化を見据え、「町が元気なうちに、いろいろ伸ばしていきたい」と語る。

 主要産業の農業では、スイートコーンやジャガイモ、テンサイ、小麦などの大規模生産が盛んだ。しかし、「『農業王国』と言われながら、子どもたちが意外と畑に入っていない」ことが気になった。防疫上の理由や大型の農業機械が危険なためだ。「土や農業に触れる機会を増やしたい」との思いから、食農教育に力を入れている。

 昨年は小学生を対象に、年間10コマほどを使って、種まきから収穫までを体験するカリキュラムを組んだ。「買い物に行くと、(子どもが)芽室産や十勝産を選ぶようになったり、食事を残さなくなったりしたという話を聞く」と手応えを感じている。子どもたちには「食料を供給する誇りの持てる町だと教えたい」と話す。

 現場重視の姿勢は一貫しており、「流汗悟道(りゅうかんごどう)」という言葉を好む。「現場に行ったり、汗を流したりしないと、物事の本質は分からない」という。職員には「町民との対話を通じて、いろいろ提案してきてほしい」と期待する。

 〔横顔〕企画財政課長、農林課長などを経て2018年に町長就任、2期目。小中高と野球チームで主将を務めた。「見た目が怖いと言われるが、意外とフレンドリーだ」と笑う。

 〔町の自慢〕町の西側に広がる日高山脈は国立公園化の検討が進んでいる。「新嵐山スカイパーク展望台」からは十勝平野の雄大な風景を望め、近くにスキー場もある。

(了)

(2023年2月13日iJAMP配信)

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