インタビュー 【トップインタビュー】政府支援のアリーナで観光誘客=桑江朝千夫・沖縄県沖縄市長 2023/02/15 08:30

沖縄県第2の都市、沖縄市。政府の全面支援で完成した「沖縄アリーナ」が、沖縄振興策の成功例となりつつある。プロバスケットボールの強豪「琉球ゴールデンキングス」の躍進も相まって全国的な知名度が高まり、今夏のワールドカップ(W杯)の会場にも選ばれた。建設の予算獲得に奔走した桑江朝千夫市長(くわえ・さちお=67)は、「経済活性化を生む。目に見える形で人の流れをつくる」と意気込む。
1期目でアリーナ完成を公約に掲げ、2期目に竣工(しゅんこう)。昨年の市長選で3選した。「(収容人数)1万人は多いと説得されたが絶対に譲れなかった」と振り返る。当初はその規模を疑問視する見方が少なくなかったが、完成後はW杯招致実現など効果を肌で感じられるようになり、県外自治体の視察も相次ぐ。
北部のビーチリゾートや、国際通りを有する那覇市などに比べ、沖縄市は観光資源が乏しかった。しかし、アリーナを起爆剤に、新たにホテルが続々誕生。「海や首里城ではなく、スポーツやコンサートで楽しむ新たな沖縄観光の分野をつくり出す。もう素通りされる町ではなくなる」と満足げだ。キングス人気はソフトとハードがかみ合った好例となり、「プロ野球キャンプが沖縄の野球少年を育てたように、バスケで夢が持てる町になる」と語る。
嘉手納基地など米軍施設が市面積の34%を占めるが、2016年には牧港補給地区(浦添市)の機能移転受け入れを表明。「返還可能な基地を縮小・返還する方針を安倍政権が具体的に進めた。求めてきたのは県側だ」。自公の支援を受けた市長として、基地の整理縮小に協力する姿勢を貫く。浦添市は那覇市に隣接し、返還予定地は潜在力が高いとされる。「二十数年後には沖縄の中心となり、経済を押し上げる」。市町村が一丸となって沖縄の成長を後押しすべきだとの立場だ。
県内市長会長を務める。県を介さず、内閣府から市町村に直接交付される「沖縄振興特定事業推進費」を巡っては、各市の市長を巻き込んで上京。増額を沖縄・北方担当相に談判、実現させた。「沖縄独特の基地問題や低所得の懸念があり、市長会として要求する必要がある」と訴える。
この際、県内で唯一、自民党と反目する「オール沖縄」の支援を受けた宮古島市の座喜味一幸市長が同行したことの意義を強調する。元自民県議の座喜味氏は桑江氏と当選同期で、「考え方は一緒だと思っている」。今後の政治決戦をにらみ、保守陣営の拡大にも余念がない。
〔横顔〕渡辺美智雄元外相の私設秘書を務め、中国・天安門事件前後には議員会館で公用電話の留守番を任された。「どうしていいか分からず緊迫と不安でたまらなかったが、電話は鳴らなかった」
〔市の自慢〕沖縄アリーナ。W杯で「こんな小さな町に世界がやってくる」と熱弁。
(了)
(2023年2月15日iJAMP配信)