インタビュー 【トップインタビュー】新公園誕生で交流人口増へ=田代堯・大阪府岬町長 2023/02/20 08:30

大阪府の最南端に位置し、海や山に囲まれた自然豊かな岬町。約3年前に閉園したレジャー施設「みさき公園」跡地に、新たなテーマパークが近く誕生する。現在4期目の田代堯町長(たしろ・たかし=79)は「町を左右する新たな公園。多くの人に来場してほしい」と期待し、交流人口の増加を狙うとともに企業誘致を加速させ、定住へとつなげる戦略を描く。
南海電鉄が管理運営していた「みさき公園」は動物園やプールなどがあり、町民らの憩いの場だった。しかし、赤字経営が続き、同社は撤退を判断。突然の申し出に「びっくりしたし、ショックだった」と振り返る。存続の願いはかなわず、町は新たな都市公園として再生することを決めた。
ネックになったのは土地の問題。同社所有のため「(民有地では運営の)土台が不安定で公園の再生は難しい」と考え、町への無償譲渡を求めた。最終的に町の要望は実現し、「なかなか勇気が要ること」と同社の決断に敬意を表する。
新たな公園は民間の資金やノウハウを活用するPFI事業で整備。2024年以降に開園する予定だ。町などは22年秋、全天候型の動植物園や宿泊施設などが盛り込まれた公園の概要を発表。基本計画も近く公表予定で、「世界的な公園になってほしい」と心待ちにする。人口減少が続く中、「公園整備を機に岬町へ遊びに来て、住みたいと思ってもらえれば」と語る。
こうした中、町は公園を核にした動きを模索する。町内の深日(ふけ)港と兵庫県の淡路島を結ぶ航路の再生を目指し、17年度に始まった社会実験が鍵を握る。関西国際空港の利用者らが新しい公園を訪れ、淡路島と行き来する大阪湾南回りの観光ルートに着目。「まちは港から栄える」との信念の下、海を生かした観光客誘致を狙う。
定住への布石も打つ。「自然環境だけで人口は増えない。職住接近が重要」と捉え、働く場の確保に尽力する。関空の埋め立て土砂を採取した土地や、関西電力の発電所跡地への企業誘致を関係先と連携して進めており、新公園での雇用創出にも期待する。
一方、町は21年度、過疎地域に指定された。ただ、「逆にありがたいこと」と受け止める。老朽化した公民館の建て替えで、図書館を含む複合型施設の整備検討を開始。有利な財政措置を活用した住民サービス向上へも歩みを進める。
〔横顔〕宮崎県出身。民間企業、岬町議を経て09年に初当選。「何事にも一生懸命に誠実に」をモットーに町政運営に当たる。
〔町の自慢〕町内の道の駅は新鮮な地魚が並び、観光客や地元住民でにぎわう。家族で楽しめる海釣り公園や釣り堀などがあり、多様なマリンスポーツも体験できる。
(了)
(2023年2月20日iJAMP配信)