インタビュー 【トップインタビュー】赤十字病院の誘致目指す=武田哲・岩手県滝沢市長 2023/02/27 08:30

盛岡市の北西部に隣接する岩手県滝沢市。盛岡赤十字病院の滝沢市への誘致を掲げ、昨年の市長選で初当選した武田哲市長(たけだ・さとる=58)は「地球温暖化で水害リスクは日増しに高まっている。東日本大震災を経験した岩手県だからこそ、確かな医療提供体制を確立する必要がある」と語る。
盛岡赤十字病院は36年前、盛岡市中心部から同市南部に移転した。北上川の右岸に位置し、同市の防災マップでは、洪水災害時の浸水深が0.5~3メートル未満。氾濫流による家屋倒壊などの危険があり、早期の立ち退き避難が必要な区域とされている。
自身が旧滝沢村議だったとき「大震災に対応するDMAT(災害派遣医療チーム)や日本赤十字社の活動を見て、素晴らしいものがある」と感銘を受けた。その後地域医療を考える中で、「基幹病院が浸水想定区域に建っていることはまずいのではないか」と思うようになり、医療関係者とも意見交換を行った。岩手県議になった後も地域医療を学び、市長選出馬に当たり盛岡赤十字病院の滝沢市への誘致を表明した。
なぜ滝沢市なのか。「今、家族の通院のために、皆さん仕事を休んで車で送り迎えしているが、体が動くうちは自分の足で行くべきではないか。雪や雨に当たらずに病院に行くには、鉄道駅のすぐそばに病院を置くのが一番良い」。設備が整うJR駅のうち、隣接する場所に用地が確保できそうで、盛岡市のすぐ近く、高速道路のインターチェンジからも至近―という条件がそろっている所が滝沢市にはあるからだ。当然、洪水時の浸水想定区域から外れている。
理由はまだある。滝沢市には陸上自衛隊の岩手駐屯地もあり、「県内で災害が発生した時に、自衛隊と即応態勢をとりやすい」。また、両市が入っている盛岡保健医療圏では、基幹病院が圏域南部に集中していることも大きな理由で、滝沢市に日赤病院が移転すれば、圏域北部の八幡平市や葛巻、岩手町の患者の利便性も格段に向上する。
市長当選後、盛岡赤十字病院のほか、県知事や盛岡市長、県医師会長に会い、就任あいさつを兼ねて日赤病院誘致の考えを表明した。「まずはあいさつ。様子を見ながら計画を作っていこうと考えている」という。
病院は設置後50年もたてば、建て替えや耐震化などさまざまな措置を講じていかなければならない。「県道の付け替えや土地利用計画などをきっちりやることを考えれば、今から準備を始めて早すぎるということはない」と述べた。
〔横顔〕小学生にラグビーを教えていたが、息子にバトンタッチしてから入門する子供が増えたそう。「じいちゃんに教わるより、兄ちゃんに教わる方が楽しいんだろうな」
〔市の自慢〕初夏の風物詩「チャグチャグ馬コ」や県内最高峰の「岩手山」がそろう中、多品目の農産物が自慢という。「戦後の開拓者が耕した郊外の風景も残したい財産だ」
(了)
(2023年2月27日iJAMP配信)