インタビュー 【トップインタビュー】住民のため、職員から元気に=片岡雄司・高知県佐川町長 2023/03/09 08:30

票数をほぼ二分した高知県佐川町長選から1年半が経過した。1期目の片岡雄司町長(かたおか・ゆうじ=58)は町に一体感を生むため、住民との懇談会を重視し、職員にも地域との触れ合いを促すなど、積極的な交流を行ってきた。片岡氏は「住民を知ることも、職員を知ってもらうことも大事」とした上で、そのためには「職員が元気で明るくないといけない」と話す。
住民との懇談会は五つの地区それぞれで不定期に開催。水道や道路などのインフラ整備の他、学校施設の改修の要望が多いという。ただ、片岡氏は意見を聞くだけではなく、住民へ進捗(しんちょく)状況を説明することにも気を配る。「(要望を)出しても、やってくれるか返事が無ければ不安になる。いついつ頃にできるとか、検討中だが来年度以降に取り掛かるとか、かっきり説明するように職員に言っている」と述べる。
職員が積極的に住民と交流できるようにするために、元気で明るい雰囲気づくりにも励む。具体的には、町長室の扉を開放したり、各課を回って職員に声掛けをしたりしている。「そこここで話し声や笑い声が聞こえるようになった。(施策について)できないではなく、どのようにすればできるようになるか、知恵を絞って提案してくれるようになった」と成果を感じている。住民からは「明る(く)なったやんか」「職員から声を掛けてもらった」などの声が寄せられているという。
子育て支援は、高齢者支援に並べて一番に取り組みたい施策としてきた。「子供が泣いたり笑ったり、声が聞こえることは町の活性化につながる」と説く。給食費と副食費の無償化や、町内に10年以上定住する意思のある住民への奨学金返還支援制度を創設した。
観光にも力を入れており、町出身の植物学者である牧野富太郎に焦点を当てた「まきのさんの道の駅・さかわ」の開館を間近に控えている。併設する「おもちゃ美術館」に、白い花びらが特徴のバイカオウレンなど植物を題材にした木製のおもちゃを並べる構想を持っており、植物の町を印象付ける狙いだ。JR四国の佐川駅など、他の施設も「牧野さん一色のような形」で整備をしていく。牧野は今春から始まるテレビドラマの主人公のモデルでもあることから「本当に忙しい、騒がしい町になる」と期待を込める。
周辺地域を含めて観光事業に取り組む「仁淀ブルー観光協議会」は西佐川駅に事務所を構える。同駅は取り壊しの話があったものの、駅舎を町が譲り受けて改修し、同協議会を移転させた経緯がある。「自治体が駅舎に手を入れることは大切だ。駅舎が無ければ雨風はしのげないし、昔からの風景もある。絶対に残すべきだ」と力説した。
〔横顔〕1989年に佐川町役場入りし、2021年初当選。尊敬する町出身の偉人は、宮内大臣などの要職を歴任し、町への鉄道敷設に取り組んだ田中光顕と、北海道・小樽港の整備などで「港湾博士」と呼ばれた広井勇。
〔町の自慢〕活発に意見をし、自治に取り組む住民と、江戸時代に源流を持つ日本酒「司牡丹」。
(了)
(2023年3月9日iJAMP配信)