インタビュー 【トップインタビュー】「スポーツアイランド」起爆剤に定住若年層増やす=森田弘光・鹿児島県天城町長 2023/03/10 08:30

故小出義雄監督がマラソン合宿の「聖地」として広めた鹿児島県天城町。奄美群島・徳之島の北西部に位置する町内の通称「(高橋)尚子ロード」には22年度、実業団などの合宿だけで延べ9000人が訪れ、過去最高を更新する見通しだ。森田弘光町長(もりた・ひろみつ=71)は、「スポーツアイランドのにぎわいを起爆剤に若者層の定住人口を増やしたい」と強調する。
22年10月再選時の争点だった「あまぎ自然と伝統文化体験館」は、25年度末の完成を目指す全天候型複合施設。約3000人を収容し、闘牛やコンサートなど「若者が島に戻って来たくなる場所」を求める声に応えた。海底鍾乳洞「ウンブキ」などを疑似体験でき、マンゴーなどを直売する。同じ敷地で、トビイカをはじめ生鮮魚介類や水産加工品を取り扱う。既存の町営「山猪(やましし)工房」のジビエは、返礼品として「供給が追い付かない」ほどの人気。「新設・既存施設が有機的に連携すれば、地元民やI・Uターン、インバウンドまでを紡ぐエリアにできる」との目算だ。
「平土野(へとの)港」の多機能化を、公約トップに掲げた。空の玄関口、徳之島空港と隣り合い、定期航路とクルーズ船が円滑に接離岸できるようにし、新設の文化体験館エリアを包摂する「空港・港湾一体となった経済拠点をつくり上げる」。「ハードルは高い」ものの、「『1丁目1番地』に持ってくることで町民と共に夢を追う旗幟(きし)を鮮明にしたい」と語る。世界自然遺産登録を機に「『我が島こそ』という発想を捨て、南西諸島全域、台湾までをつなぐ壮大なクルーズ実現を東京の運航会社に掛け合っている」。
幼児教育・保育無償化は独自に0歳からに前倒し。22年までに高校生までの医療費と600人余の小中学生の給食費も無償化した。「子育てのしやすさという点で評価が上がってきた」。今後は「住環境の確保に創意工夫しつつ、(世界的な自然価値・伝統文化の体系的な学習プログラム)『あまぎ学』を通じて教育振興も深堀りしたい」。町政運営に全方位で目配りする。
〔横顔〕サトウキビ農家の長男。1976年に天城町役場入り。農政課長、総務課長を経て18年3月まで7年余、副町長。2男は独立し、妻との早朝散歩が唯一の趣味・ストレス解消法。
〔町の自慢〕今年36年目となるトライアスロンは国内外から男女が集う国内大会の代名詞。熱帯魚とサンゴ礁の「ヨナマビーチ」で号砲が鳴り、東シナ海を一望できるバイク、ランと続く。地元料理と島唄、闘牛で歓迎する前夜祭、沿道の栄養補給、後夜祭まで手厚くもてなす。
(了)
(2023年3月10日iJAMP配信)