コラム 【地方議会めぐる新潮流2】オンラインで質問可能に 2023/03/17 10:00

甲府市議会議員 神山玄太
総務省は2月7日、自治行政局行政課長通知を出し、本会議での一般質問について、出席が困難な事情で議場にいない議員がオンラインによる方法を取ることは差し支えないと新たな判断を示しました。これまで委員会でのみ可能とされたオンラインによる会議運営が、一部ですが本会議でもできるようになりました。これは昨年12月28日に提出された第33次地方制度調査会の答申(議会へのオンラインによる出席)を受けた対応です。
▽通知の要点
同省は、新型コロナウイルス感染症対策などに係る地方公共団体での議会開催方法に関するQ&Aとして通知しました。以下が要点です。
・本会議で団体意思を最終的に確定させるには、議員本人による自由な意思表明が疑義の生じる余地のない形となる必要がある
・地方自治法第113条の本会議への「出席」は、現に議場にいることと解されている
・同法第116条第1項で、本会議の議事は「出席議員の過半数」で決するとされており、議員が議場で表決をしなければならない
・表決に対する賛否の意見の開陳である討論や、表決・討論の前提として議題となっている事件の内容を明確にするための質疑は、議員が議場でしなければならない
・団体の事務全般について執行機関の見解をただす趣旨での「質問」は、各団体の会議規則などに定められた手続きに基づく。このため、各団体が所要の手続きを講じた上で、出席が困難な事情で議場にいない議員がオンラインによる「質問」をすることは差し支えないと考えられる
つまり、本会議への出席は「現に議場にいること」という従来の見解を変更せず、一般質問のみ出席が困難な議員がオンラインによる方法でできるとされました。一方、表決や討論、その前提としての質疑はオンラインによる方法では認められませんでした。
▽オンラインで可能なのは?
通知で示されたQ&Aでは、欠席事由に該当した議員がオンラインによる方法で一般質問できるとされています。全国市議会議長会が作成した標準市議会会議規則で欠席事由を見ると「公務、疾病、育児、看護、介護、配偶者の出産補助その他のやむを得ない事由」とされています。
育児中の議員が育児のためにどうしても欠席したり、離れて住む親の元に急いで駆け付けて介護しなければならなくなり欠席したりした場合も、オンラインによる方法で一般質問できることになります。この原稿は雪が降る季節に書いていますが、例えば、大雪のため道路網が寸断されたとか、離島在住のためにしけで船が運行できないなどの理由で欠席となった場合も同規則の「その他のやむを得ない事由」に該当し、オンラインで自宅から一般質問できます。
つまり、正当な理由で本会議を欠席する場合、議会で根拠規定の整備が整っていることを前提に、議員が求めればオンラインで一般質問できるのです。
▽大きな一歩
今回の通知は、本会議への「出席」を現に議場にいることとする従来の見解の変更には踏み込まず、本会議でオンラインは一般質問のみにとどまりました。表決などには認められませんでしたが、それでも本会議でオンラインによる方法を使えるようになったのは地方議会のデジタル化に向けた大きな一歩だと考えています。
本会議でオンラインによる一般質問をするには、会議規則の改正や要綱など根拠規定の整備が不可欠ですが、地方議会は必要に応じて一般質問をオンラインで実施することで、さらなる地方議会のデジタル化に向けた理解を進めるべきだと思います。
同省の調査によると、2022年1月1日現在、委員会にオンライン出席ができるようにするため、委員会条例や会議規則を改正している自治体(都道府県・市区町村)は、135団体で全団体の7.6%にとどまっています。私たちの甲府市議会でも検討事項には上がりましたが、具体的な検討、改正はこれからです。本会議でもオンラインによる方法で一般質問できるようになったことから、委員会へのオンライン出席も含め、根拠規定の整備をしていきたいと思います。
ところで、本会議でもオンラインによる方法による運営を認めたこの通知は、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的な助言として出されました。ここで言う「技術的」とは、主観的判断や意思を伴わないという意味とされます。これまで同省ができないと解釈していた本会議でのオンラインを用いた議会運営について、この通知の前後で大きく見解を変えたことになります。主観的判断や意思を伴わない技術的な助言ですが、通知1枚で状況が一変するとはすごいことだと思わせられました。(了)
- ◇神山玄太(かみやま・げんた)氏のプロフィル
- 1982年甲府市生まれ。金沢大学法学部を卒業し、早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。日本インターネット新聞社で記者として勤務後、甲府に戻る。2010年、国会議員政策担当秘書資格試験に合格。11年に甲府市議に初当選。12年に早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員に就任。第6回マニフェスト大賞でグッド・マニフェスト優秀賞を受ける。15年の甲府市長選挙では次点で落選。甲府市議に2期目の当選後、17年9月から1年間「関東若手市議会議員の会」会長。19年4月から3期目の甲府市議。山梨英和大学で非常勤講師を務めた経験も。「ワイン県」山梨で活動する議員として21年にワインエキスパート資格も取得。