インタビュー 【トップインタビュー】公民連携、DX注力の1年=清山知憲・宮崎市長 2023/03/16 08:30

昨年1月の市長選で現職らを破り初当選した宮崎市の清山知憲市長(きよやま・とものり=41)。医療法人理事長としてクリニックの経営にも携わる清山氏は、公民連携の重要性を強く認識。この1年、都市部活性化などに向けた企業との連携強化や、外部人材の導入などを通じ働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた地盤づくりに注力してきた。市役所の改革では「役所にできることとできないことの峻別(しゅんべつ)はしっかりしている」と率直な口調で語る。官民が担う役割を整理し、庁内の業務効率化をさらに推し進めていく考えだ。
22年度春の組織改編では「市役所改革推進課」「都市戦略課」「DX推進室」などを新設。ともすると保守的になりがちな職員の意識改革を図るため、副市長や職員のコンプライアンス指導に当たる人材などを外部から次々と招聘(しょうへい)した。
「市民にとって本当に必要なこと」を追求するため、自身が職員と直接対話する場も大切にしている。昼休憩には30代の若手職員を市長室に招き、フリートークを実施。全13部中7部まで行ったといい(2月21日現在)、参加した職員からは「市長と話がしやすくなった」と声を掛けられることも。「私自身、県議や医師としての民間経験があるが、市職員として皆さんと肩を並べて仕事をした経験がない。入りたての20代の職員がどういう悩みを抱え、上司や部下との間に挟まれてどんなことを思っているのか肌感覚では分からない部分がある」と謙虚に分析する。日々の報告や協議でも、「『生煮え』の段階でよいから早めに相談に来てほしい」と呼び掛け、積極的に職員の意見に耳を傾けている。
庁内のDX推進では、昨年9月に「DX推進方針」を策定し、新年度からはマイナンバーカードやICT(情報通信技術)ツールを活用した「書かない、待たない窓口」の実現や地域のデジタル格差是正に向け、本格的に動きだす構えだ。市長によると「宮崎市はまだまだ紙の決済が多く、手続きが煩雑」で、民間と連携して事業を進めていく中でも支障が生じるのではないかと懸念。「今後、インターネット上のクラウドサービスを利用して業務が進められるよう、しっかり予算を付けてDXを加速させていきたい」と語る。行政手続きのデジタル化を推進する中で、23年度は業務プロセス見直し(BPR)にも着手し、それぞれの課が抱える業務の見える化も実施していく。
九州地方の中核市初となる児童相談所設置に向けても準備を進めている。児童福祉司や児童心理士など専門職の確保や職員の業務負担が増える面で課題は山積しているが、「子どもたちのために必要だったらやるべきだ」と断言する。「最近の行政はマーケティングとかシティプロモーション、産業振興の分野に乗り出してきているが、自殺対策や健康増進、児童福祉などは本来行政が力を入れるべきこと」と指摘。「公共にしかできないことは公共で進めていく」と改めて強調した。
〔横顔〕宮崎市政史上最年少の40歳で市長就任。市長選で新人が現職を破るのは40年ぶりだった。休日は経営や政策に関する本を読むなどして過ごす。
〔市の自慢〕美しい波と海岸線が特徴。全国有数のサーフスポットとして知られ、国内外から観光客が訪れる。
(了)
(2023年3月16日iJAMP配信)