2023/令和5年
531日 (

インタビュー 【トップインタビュー】過去を乗り越え、町を盛り上げる=望月利樹・山梨県富士川町長 2023/03/29 08:30

望月利樹・山梨県富士川町長

 甲府盆地の南西部に位置し、2010年に増穂町と鰍沢町が合併して誕生した富士川町。公共工事を巡る談合事件で前町長が辞職したことを受けて22年1月に就任した望月利樹町長(もちづき・としき=54)は、「過去の部分を反省しながらも、未来に向けて町の皆さんの機運を盛り上げようと心掛けた」とこの1年を振り返る。

 21年11月に辞職した前町長は宿泊施設などの設計業務の指名競争入札で不正に入札参加業者を選定していた。旧増穂町出身で、当時3期目の県議だった望月町長は「町をなんとかしないと」との思いで出馬。就任後すぐに、第三者委員会を設置した。「おおむね1億円未満」の事業を対象にしていたことで、事前に参加業者を決められる指名競争入札が常態化していた点に事件の原因があるとして、22年4月から「1000万円未満の工事」に対象を変更。その結果、21年度は132件中4件だった一般競争入札が22年度は103件中50件まで増加した。さらに23年度は、庁舎の窓口でしか閲覧できなかった入札参加業者の入札金額や指名業者の選定理由を町のホームページでも公表し、透明性を確保する。「これまでの仕組みは悪意があれば悪用されてしまうものだった。(入札制度改革は)これで終わりではなく、常にブラッシュアップしながら進めていきたい」

 望月町長の公約は「対話と現場主義による協働のまちづくり」。その言葉を体現したのが中学校統合問題への対応だ。少子化が進む中でも社会性を身に付けられる教育環境を確保するため、町立中学校2校を統合し、廃校となった築約60年の高校を改修して新たな中学校を開校する計画が前町長の下で進められていた。しかし望月町長は、「決定事項が町民にオープンになっておらず、一部の町民や保護者が寝耳に水の状態だった」として一度白紙に。その後、教職員や小中学生らを対象とした集会やアンケート調査を通じて対話を重ねた結果、理解が深まったとして、再び計画を進めることにした。同時に、学校現場などの声も踏まえ、校舎を新築する方針に変更した。

 また、「日本一の子育て支援ができる町にしたい」と意気込む。4月から0~2歳児の一律保育料無償化をスタート。子どもを町外に預けている町民も対象にする。さらに、集団保育と需要が高まっている3歳未満児保育の充実化を図る。4カ所あった保育所を23年度に一つ閉所し、その分の人材や運営費を残り3カ所に集中させることで、園児が減少する中でも集団教育ができる環境を確保するとともに、0~2歳時クラスの定員を拡張する。「人口減少を防ぐためにも子どもを育てやすい町にする。中学卒業まで教育費が一切掛からないことが理想だ」と今後の展望を語った。

 〔横顔〕旧増穂町議、県議を経て現職。趣味は学生時代から取り組んでいるサッカーで、コーチの資格も持つ。現在は50歳以上のチームに所属し、汗を流す。

 〔町の自慢〕冬至から元旦にかけて高下地区で見られる日の出「ダイヤモンド富士」。

(了)

(2023年3月29日iJAMP配信)

同一カテゴリー記事