2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】使命は「防災に強い町づくり」=西村博則・熊本県益城町長 2023/04/03 08:30

西村博則・熊本県益城町長

 2016年の熊本地震で震度7に2度襲われ、9割以上の住宅が被災した熊本県益城町。当時1期目だった西村博則町長(にしむら・ひろのり=66)は「日本全国で災害が起きていたが、それまでよそ事として捉えていた」と振り返る。22年4月に3期目の当選を果たし、公共インフラの整備や自主防災組織の活動支援に注力。「防災に強い町づくり。これを進めるのも益城に与えられた使命」と強調する。

 熊本地震では、庁舎内外に無数の亀裂が入り、エレベーター棟は倒壊。災害対策本部を庁舎から離れた保健福祉センターに移し対応した。「庁舎が被災して使えなかったのが、復旧事業を進める上で、非常にネックになった」

 4月には震災から7年を迎える。「ハード面の復旧事業はほとんど完了した」と強調する一方、今後の課題として町民の「心の復興」を挙げる。例えば町民の交流を目的としたソフトボール大会は、地震前なら例年30~40チームが参加していた。被災した球場が復旧し、20年に大会を再開しようとしたところ、新型コロナウイルス感染拡大で中止に。21、22年は申し込みが少なく、大会を開けなかった。「コロナもあるが、まだまだスポーツをやる気持ちになってないのではないか」と懸念する。

 震災当時、庁舎は避難所に指定されていないにもかかわらず、300人近くが訪れて駐車場などを利用。「町民は役場を頼りにしている」と痛感したという。5月に開庁予定の新庁舎は、総事業費約51億円。熊本地震と同じ規模の揺れにも耐える免震装置を備え、防災力を強化。屋上には展望テラスを設けるなど「町民の皆さんに親しまれる庁舎になってほしい」と期待を込める。

 23年度の課題は、財政基盤の確保だ。熊本地震からの復旧事業で「24年度から毎年4~7億円の赤字が出てくる」と表情を曇らせる。こうした中で期待を寄せるのが、馬刺しや果物、野菜などを返礼するふるさと納税。町長に就任した14年度は100万円ほどだったが、21年度が約19億円、22年度は10億円を超える見込みだ。返礼品を大幅に増やしたことなどが奏功しており、「担当職員が知恵を出してくれている」と頬を緩ませる。

 〔横顔〕午前5時から、ほぼ毎日1時間ほどジョギングをする。走りながら職員向けの朝のあいさつなどを考える。23年の熊本城マラソンではフルマラソンを5時間18分で完走した。

 〔町の自慢〕「町民との連帯感」。熊本地震では町民が頑張ろうと励まし合い、優しさを感じたという。

(了)

(2023年4月3日iJAMP配信)

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