2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】インバウンド回復に注力=村上英人・宮城県蔵王町長 2023/04/12 08:30

村上英人・宮城県蔵王町長

 「蔵王は農業と観光の町」と語り始めたのは、5期目を迎えた宮城県蔵王町の村上英人町長(むらかみ・ひでと=71)。蔵王山の火山湖「御釜(おかま)」に近く、自慢の遠刈田温泉や高原野菜で誘客を進め、2019年以前の観光客数は年間約180万人だったが、新型コロナウイルス禍で21年は統計上、過去最低の約96万人に減少した。

 村上町長は「(観光客数は)コロナ禍で減ってしまったが昨年から宮城県や国の旅行支援などで持ち直してきた。台湾からの国際線の定期便が再開され、今後はインバウンドに力を入れて多くの人に足を運んでもらいたい」と話す。

 雄大な自然が国内外の人々を引き付ける一方で自然災害へのリスクヘッジが求められる。14年の御嶽山(長野・岐阜県境)噴火で同町も風評被害を受け、15年には、火山性地震の増加などで蔵王山が噴火警戒レベル2に指定。火口付近への立ち入りが制限されるなど観光面で打撃を受けた。

 対策として監視カメラの整備や周辺河川の火山砂防事業など安全対策に取り組んでいる。昨年には火山を抱える自治体などと防災や活用法について考える「火山砂防フォーラム」を同町で開催。村上町長は「火山があることによって温泉や酪農地帯などがある。リスクを抑え火山と共生していく」と語った。

 アフターコロナで交流人口が拡大するのを踏まえ、移住政策にも力を入れる。16年11月に移住相談室を設置。18年には、定住を促進するため、町内外の人々を対象に住宅の建設費など最大80万円を支援する事業を始めた。近年相談室の利用は増加傾向にあり、補助金利用件数は計63件、100人以上の定住支援に成功したという。

 今後の課題について「自然災害が多い中、コロナ禍となればいろいろなところに補助金などの手助けをしないといけないため(財政は)厳しい」としつつも、「交流人口を増やすことで町の農作物の消費にもつながっていけば」と期待を寄せた。

 〔横顔〕趣味は料理と温泉巡り。座右の銘は「真夏の雑草のように強くたくましく」。幼少期に見たあぜ道の夏草が印象に残っているといい、踏まれても負けない強さを心掛けている。

 〔町の自慢〕高原野菜やチーズなどの農業・酪農品。開湯400年を超える遠刈田温泉や約4.3キロのロングコースを有するスキー場。

(了)

(2023年4月12日iJAMP配信)

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