インタビュー 【トップインタビュー】「ナマズで街おこし」に手応え=中原恵人・埼玉県吉川市長 2023/04/24 08:30

JR武蔵野線吉川駅の南口ロータリーに設置されている金色のナマズのモニュメントがシンボルの埼玉県吉川市。市役所にも石像を設置するなど、さまざまな仕掛けを通じて認知度向上に取り組んできた。中原恵人市長(なかはら・しげと=52)は「子どもたちが『ナマズの街だよね』と知ってくれていて、親御さんにも伝わっている」と手応えを感じている。
中原氏は「ナマズの養殖を行い、歴史があるナマズ料理を料亭で食べることができるのが他の自治体とは違う」と強調。ナマズ料理コンテストを開催し、中華料理店やイタリアンレストランでも食べられるようになった。「宇都宮市のギョーザのように、ナマズがいろんな料理でどこでも食べられるようにしたい」と力を込める。
2017年に市内で初めて開かれた「全国なまずサミット」は、新型コロナウイルスの感染拡大で中断していたが、今年7月には4年ぶりに開催する予定。全国でナマズにゆかりのある自治体を訪ね歩き、「当時の首長らにナマズを食べる街同士でつながらないか」と呼び掛けたのが開催のきっかけ。世界に打って出ることも目指しており、「ナマズを食べる米国、東南アジアの大使館や現地の人に来てもらい、国際的な友好に結び付けていきたい」と見据える。
15年の市長就任時から力を入れてきたのは文化・芸術に関連する施策。22年に市が実施した市民アンケートでは、文化芸術に対する満足度が過半数に達し、就任時と比べ24ポイントも上昇した。中でも市民が俳優となって出演する演劇の公演に注力し、高齢者が元気になったという話も耳にする。「演劇によって、一つのコミュニティーができた。障害者や外国人を含め、今まで知り合いにならなかった世代が交流することで、引きこもりの子どもがコミュニティーに参加できるようになるなど課題解決にもなった」と振り返る。
今年2月に3選。市長として心掛けている言葉は「公正無私」。JR吉川美南駅東口周辺の開発にも力を入れ、「もう少しすれば吉川の顔になる。市民が何かしらのアクションを起こせるような街にしたいので、期待してほしい」と語った。
〔横顔〕筑波大第一学群卒。埼玉県議を経て15年に市長就任。趣味は野球で、今年3月、埼玉西武ライオンズとスポーツ振興協定を結んだ。締結の際には自身のキャッチャーミットを持参するほどの力の入れようで、「いつでも試合ができる体を作っている」。コロナ禍で、もう一つの趣味である絵本作りにも挑戦。「Shi―GE(シゲ)」というペンネームで「オミーのすてきなまるとおと」を出版した。
〔市の自慢〕ナマズの里。吉川駅の「金のなまず」は人間国宝で漆芸家の室瀬和美氏が制作した。
(了)
(2023年4月24日iJAMP配信)