2023/令和5年
531日 (

インタビュー 【トップインタビュー】県民目線のデジタル行政へ=黒岩祐治・神奈川県知事 2023/05/08 08:30

黒岩祐治・神奈川県知事

 4月の神奈川県知事選で、「県民目線のデジタル行政」を公約に掲げ、4選を果たした黒岩祐治知事(くろいわ・ゆうじ=68)。新型コロナウイルスへの対応に明け暮れた3年間を「デジタルを活用したさまざまなサービスが一気に前に進んだ」と振り返り、「コロナ禍だからこそできるようになったことをしっかり進め、『やさしい社会』を目指したい」と気を引き締める。

 抜本的な強化が課題の少子化対策として挙げたのは、無料通信アプリ「LINE」を活用した「子育てパーソナルサポート」だ。「夜中に子どもが高熱を出したとき、一体どうすればいいのか。ラインでつながっていることで、的確にその場でお答えしていく」。核家族化で孤立した子育て環境を憂い、「デジタルの力でコミュニティーを作り、一人ひとりの不安を解消したい」と意気込む。

 県内すべての道路をデータ化し、カメラを搭載した車を走らせ、白線の状態を把握する「AI(人工知能)技術で消えかけ白線ゼロ」も打ち出した。自動運転社会の到来を念頭に、まずは横断歩道を最優先する考えで、「警察と調整し、できるだけ早く実現したい」と話す。

 AIを巡っては、県はコロナ対策で「AIコール」と呼ばれる自動電話を健康観察に導入した。最近話題の「チャットGPT」については「セキュリティーの面でまだ不安な部分があり、見極める必要があるが、しっかりと取り入れていきたい」と考えている。

 これまで、健康と病気の間の状態を示す「未病」の改善を提唱するなど、高齢化対策に力を注いできた。昨年9月には、世界保健機関(WHO)などから「高齢化社会をより良くする世界のリーダー50人」に日本人で唯一選出された。「日本は超高齢社会の最先端の国。2050年には北半球の相当な国が同じような状況になる」と指摘。高齢化が進む県営団地でコーラスグループを作る取り組みなど、「こうしたアプローチは世界にあまりなく、どんどん発信したい」と話す。

 コロナ禍の3年間に関し、「さまざまな神奈川モデルを発信し、国が即座に受け止めてくれた。国との連携は非常にうまく行った」と振り返る。一方、県内の政令3市が県からの独立を主張する「特別市」構想には「あまりリアリティーがない。県と政令市が連携して一体となって動くことが、大きな力を発揮するのでは」と説く。

 始まったばかりの4期目について、趣味のマラソンになぞらえて「全く新たに生まれ変わった自分として走り始めている。与えられた4年間をしっかりと走り、大きな成果を挙げたい」と力を込めた。

 〔横顔〕コロナ禍を契機に、オンラインでベトナム語の勉強を始めた。「この年になって新しい言語(を勉強するのは)、非常に刺激になる」

 〔県の自慢〕横浜、鎌倉、箱根に次ぐ「新たな観光の核」として、城ケ島・三崎、大山、大磯を推している。

(了)

(2023年5月8日iJAMP配信)

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