2023/令和5年
1210日 (

インタビュー 【トップインタビュー】根底は市民ファーストのまちづくり=原欣伸・愛知県犬山市長 2023/05/11 08:30

原欣伸・愛知県犬山市長

 愛知県北部に位置する犬山市。国宝犬山城や「博物館明治村」などがあり観光地として名高い。一方で、目下の課題は人口減少だ。昨年の出生数は400人を切り、高齢化率もさらなる上昇が見込まれる。昨年12月に就任した原欣伸市長(はら・よしのぶ=54)は「来る人に楽しんでもらうまちづくりも大事だが、根底にあるのは住む人に喜んでもらう市民ファーストのまちづくりだ」と語り、住むまちへの転換と観光資源を生かした施策の両輪で取り組んでいく考えを示す。

 原市長は、「住む人が喜ばなければ本末転倒だ」と指摘した上で、「観光公害になるまちづくりはしたくないと思っている」ときっぱり。人口減少などが進む市の現状を踏まえ、「単純に対策うんぬんではなく、犬山の社会全体が高齢者、子どもたちに温かくならないといけないと思った」と話す。

 新年度は、助産師が自宅に訪問し産後ケアを行う事業を始める。「核家族化により、子育ての相談をしたくてもできなくて悩んでいる人がたくさんいる」とし、相談体制を充実させていく。また、市の特徴は、平均寿命と健康寿命の差が小さく介護認定率が低いこと。つまり、元気な高齢者が多い。健康寿命をより伸ばすため、目と口のフレイル検査を実施し健康づくりにつなげる考えだ。

 さらに、手話言語に関する条例制定も目指す。「聞こえない世界をみんなで聞こえる世界にするようなイメージ」といい、地域の店舗に協力してもらい、支援ボードを置いてもらうなどして障害者福祉への理解が進むことを見据える。自身も6~7年前から手話サークルに通っており、「皆さんの理解がさらに進むような条例制定をしたい」と力を込める。

 一方で、「簡単ではないが、多くの人に来てもらうだけではなく、本物を求めて犬山に来てくれる人にゆっくりのんびり歩いてもらえるような観光にシフトしていきたい」と青写真を描く。城下町にある町家を宿泊施設として活用しようとする民間事業者もあり、観光庁の補助事業採択に向けて市もアドバイスするなどしているという。

 職員に対しては、「市民は職員の専門性を頼って何とかしたいという思いで来ている。そこに寄り添わずして問題が解決するはずはない」と訴える。登庁の際は、庁舎の上から下まであいさつをして回るのが日課。「明るく元気な市役所にしたい」と屈託ない笑顔を見せた。

 〔横顔〕犬山市議、愛知県議を経て、2022年に初当選。日体大卒のスポーツマンで、趣味は早朝ソフトボール。

 〔市の自慢〕犬山城と茶室「如庵」の国宝二つを有するほか、鉄道駅が七つあり利便性が高い。

(了)

(2023年5月11日iJAMP配信)

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