2023/令和5年
104日 (

インタビュー 【トップインタビュー】希望づくりが人口減対策=佐竹敬久・秋田県知事 2023/05/30 08:30

佐竹敬久・秋田県知事

 総務省が4月に公表した人口推計で、秋田県の人口減少率は1.59%と10年連続で全国ワーストとなった。県は若年女性の定着・回帰を重点施策の一つに位置付け、2023年度当初予算で関連事業に総額約168億円を投じる。佐竹敬久知事(さたけ・のりひさ=75)は「『秋田はこれから良くなる』という思いを県民と共有することが、最終的には人口減少解消のファクターになる」と力を込める。

 女性の県外流出が進み、婚姻率や出生率が低下しているため、「子育て支援だけでは限度がある」と危機感を募らせる。そこで23年度は主に二つの対策に取り組む。一つは女性が働きやすい職場づくり。もう一つは女性に対する地域の偏見をなくし、暮らしやすい環境を整備することだ。

 女性の人気が高いⅠT企業の誘致に力を入れるほか、10月から東京都内に移住・就職相談の拠点を設置して情報発信を行う。急激な人口減少は経済活動や社会生活に与える影響が大きいことから、「いかに減少スピードを穏やかにし、ソフトランディングするかだ」と強調する。

 希望を持てる要素の一つが、国内最大規模の洋上風力発電の商業運転開始だ。メンテナンスや電装部品の交換などで県内企業が参入し、地域経済への波及効果は大きい。既に建設関係者の利用により、ホテル宿泊者の増加が続いている。

 総合商社の三菱商事、丸紅の事業参画も追い風だ。両社は発電事業にとどまらず、地元企業と連携した県産品の流通・販売拡大の検討も始めている。「自分たちだけで全部やろうと思っても、ほそぼそとした事業しかできない。県の幅広い産業振興に関わってくるので、これをうまく使う」と訴える。

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行し、インバウンドをはじめとする観光業の回復も見込まれる。一方でターゲットの絞り込みや情報発信が不足していると指摘し、企業や市町村の努力が不可欠だと説く。「秋田に来なければ味わえない、経験できないものをいかに作るかだ」と主張。市町村長や観光協会、物産協会、県がネットワークを組み、観光客の呼び込みに力を入れる。

 4月20日には4期目の折り返しに入った。既に今期限りでの引退を表明。「少子化対策の方向性を示し、議会の理解も得ながら、次の知事が働きやすい環境を作っていく」と語り、残りの任期で次のリーダーに託す道筋を見いだす構えだ。

 〔横顔〕ロシアのプーチン大統領から贈られたシベリア猫「ミール」(雄、11歳)を飼育中。「とても強いが、絶対に他の猫をいじめない」。毎年2月に近況動画を県公式ユーチューブで公開している。

 〔県の自慢〕22年度、新ブランド米の「サキホコレ」が本格デビュー。23年度は生産量を倍増させ、輸出も開始する。

(了)

(2023年5月30日iJAMP配信)

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