2023/令和5年
925日 (

インタビュー 【トップインタビュー】「子どももう1人」増やす=丸山達也・島根県知事 2023/06/08 08:30

丸山達也・島根県知事

 人口10万人当たりの100歳以上高齢者数が10年連続で全国1位の島根県。少子高齢化が進む現状に対し、4月に再選を果たした丸山達也知事(まるやま・たつや=53)は、UIターンを促進し、「もう1人子どもを産もう、育てようという人を増やしていく」考えだ。

 移住や定住につなげるには「まずは仕事なので、産業振興していく。音楽やリゾート型の宿泊業など、これまで島根だとないと思われていた業種が増えるようにしたい」と語り、多様な業種の企業誘致に意欲を示す。

 「県民でない人の人生選択を変えるために必要な環境整備を具体的に進めないといけない。結婚や出産といったライフイベントの選択を島根でしてもらうことが必要」と力説。職場環境や保育施設を整えるなど、仕事と子育てを両立するための公的サービスの充実も強化する。

 県の2022年の合計特殊出生率は1.57で、全国平均よりも高水準で推移している。一方、コロナ禍前の19年と比べると0.11ポイント低下。不安定な雇用やコロナ禍の影響による将来不安が原因とみており、「取り戻すのは相当大変。国の政策も活用しながら(将来不安を)解消しないといけない」と話す。

 県政運営では、現場主義と県民目線を心掛ける。県西部を訪れる「石見の日」、離島地域に足を運ぶ「隠岐の日」を年3~4回設けて県民と対話。19年に訪れた大田市では「子育ての実態を聞けた」と振り返る。中山間地域では3世代同居で協力して子育てしていると考えていたが、実際は人手不足で高齢者雇用が常態化し、保護者が子どもの祖父母に世話を頼めないといい、「イメージと異なっていた」。そこで、子育て世帯の負担軽減と子どもたちの遊び場提供のため、放課後児童クラブの支援強化に踏み切った。

 「実際の現場を脚色せずに見ることで、認識のずれが直る」と自らが訪問する重要性を説く。利用時間延長や支援員の確保といった放課後児童クラブの充実化で利用申請者数が増加。「仕事と家庭を両立しやすくなった人が増えたということ。需要の掘り起こしにつながった」と胸を張る。

 これまでの新型コロナ対応は、「県民の協力のおかげで大きな医療逼迫(ひっぱく)を回避できた」と強調。5月に感染症法上の位置付けが「5類」に移行となり、「軽装備の中でいかに医療逼迫を招かずに乗り越えるか、初めて試される」と険しい表情を見せる。「(傾向の把握が)これまでよりも難しくなるので、緊張感を持って対応しないといけない」と力を込める。

 〔横顔〕多忙な日々だが、松江しんじ湖温泉の「温泉スタンド」で温泉水をくんできて、「自宅で毎日温泉に入っている」のが活力源だと笑顔で語る。

 〔県の自慢〕22年の全国和牛能力共進会で、「しまね和牛」が肉質部門1位を獲得した。さらに、「あご」と呼ばれるトビウオやそば、地酒など特産品が豊富。

(了)

(2023年6月8日iJAMP配信)

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