インタビュー 【トップインタビュー】「悪名は無名に勝る」=石丸伸二・広島県安芸高田市長 2023/06/09 08:30

「根本にあるのはやっぱり市政に市民の関心を集める、これに尽きる」。2020年の初当選直後から、市議会で居眠りしていた議員をツイッターで批判し、その後も議会との対立姿勢を崩さず一躍「時の人」となった広島県安芸高田市の石丸伸二市長(いしまる・しんじ=40)。批判も含め、自身に耳目を集めてきた目的については「あらゆる手段を使って安芸高田市を全国区に発信するためだ。悪名は無名に勝る」と語る。
現在もその姿勢は変わらず、地元紙記者とも会見の場で応酬を重ね、その様子をユーチューブで配信するなど、発信力を抑える気配はない。相手と対峙(たいじ)することをプロレスに例えて「褒めたり脅したり、挑発したり、あらゆる手段を使ってとにかくリングに上がってもらう。一人じゃプロレスはできないから。必ず相手が必要で、これをやることでいろんな人が市政に関心を持ってくれる」と不敵に笑う。
今年5月下旬には地元市議を介した市民との「自治懇談会」を開催。元銀行マンの経験も生かしてスクリーンに映したグラフを基に市の危機的な財政状況を説明し「ほっといたら20年後にはこのまちはつぶれる。この集落も消滅する」と訴え、市民に行政サービスの取捨選択を迫った。同席した市議は「市民にとってはあまり聞きたくない話で、よく正直にこんな嫌われることを言うものだ」と舌を巻いた。
説明内容が自身の政治活動にとっては不利に働くという忠告も「石丸伸二という個人のデメリットはどうでもいい。市民や市のためになるかどうかだ」と意に介さない。6月末にも市内の公共施設を3割以上廃止する具体的な提案を公表するという。
財政危機にあることを隠さない理由について「市民は(市の現状を)今まで聞かされず、知らなかった。僕はリスクを取っている。市民が説明を理解できない場合は、石丸に辞めてほしいと望むかもしれない。市民がそう選ぶならそれでいい」と話した。「でも僕は最後のところは信じている。市民の良識を。信じているから、言わないといけないことは言う」と結んだ。
〔横顔〕趣味は漫画収集とトライアスロン。座右の銘は「自ら反(かえ)りて縮(なお)くんば、千万人と雖(いえど)も吾往かん」。中国の思想家「孟子」の言葉で「自分で考え抜いた結果であれば相手が何万人だろうと私は進む」。
〔市の自慢〕神楽、サンフレッチェ、毛利元就。神楽は終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)による外圧をうまく利用し「伝統芸能の退屈なところを省き、見せ方に徹底的にこだわった。小さい子からお年寄りまでみんな夢中になれる」。
(了)
(2023年6月9日iJAMP配信)