インタビュー 【トップインタビュー】広域連携で人口減少対策へ=木村純夫・埼玉県幸手市長 2023/06/21 08:21

全国の自治体で唯一「幸」がつく市で知られる埼玉県幸手市。英訳の「ハッピー・ハンド」にあやかり、市役所ロビーには元メジャーリーガーの野茂英雄選手や宇宙飛行士の毛利衛さんら著名人の手形が並び、訪問者の注目を集めている。県内40市で人口が唯一5万人を切っているが、木村純夫市長(きむら・すみお=72)は「人口減少の中で(周辺自治体間で)人の取り合いをするのではなく、地域がコラボレーションし、地域を育てることが必要だ」と強調する。
広域連携を訴える背景には、2004年から10年間勤めた済生会栗橋病院(現済生会加須病院)での経験がある。幸手市など県北東部の7市2町で形成する利根医療圏の在り方について、自治体と医療機関、市民が三位一体となって医療を完結する構想を打ち出した。
こうした枠組みを人口減対策でも作れないかと考えており、「いかに協調し、みんなでこの地区を良くするか。人口問題でも同じことが言えるのでは」と話す。
実家は幸手市に隣接する茨城県五霞町の専業農家だったこともあり、農業振興を重視。幸手市内では江戸時代に幕府上納米として評価の高かった幻の米「白目米」を現在でも栽培するなど、米作りに力を入れているが、「それだけでは先行きが不透明だ」と考える。そこで、昨年4月から埼玉県の農業専門職員を派遣してもらい、ゆめファーム全農が施設園芸トレーニングセンターの開設を予定しており、新規就農者の育成を進めていく。
交通インフラ面では3月に、圏央道久喜白岡ジャンクションから幸手インターチェンジ間の4車線化が実現した。「驚くほど流通網が変わってきた」成果もあり、ニトリの物流センターや大成建設の研究所が24年度に完成する予定。特に後者は「カーボンニュートラルの新たな事業展開をしてくれる研究所で、環境問題についても教えてくれるので、子どもたちにとって極めて有益だ」と期待を寄せる。
〔横顔〕日本鉱業(現ENEOSホールディングス)で働き、海外赴任経験も豊富だったが、高校・大学の柔道部時代の先輩に誘われて、01年に助役(現副市長)になり、幸手との関係ができた。マイブームは週に4、5日、中川のほとりを1時間以上歩くことで、「散歩すると考えが浮かぶことがある」。
〔市の自慢〕桜の名所で知られる権現堂堤。昨年10月に遊具やバーベキュー場も整備され、1日中家族で楽しめる場となった。あじさいやマンジュシャゲなど、季節ごとに異なる花々も魅力だ。
(了)
(2023年6月21日iJAMP配信)