2023/令和5年
104日 (

インタビュー 【トップインタビュー】子育ても自然も「県一の環境」を=藤本浄孝・山口県周防大島町長 2023/06/28 08:30

藤本浄孝・山口県周防大島町長

 「瀬戸内のハワイ」とも称される山口県周防大島町。温暖な気候や美しい砂浜が魅力だが、高齢化率は5割を超え、出生数も2020年以降は年30人台まで落ち込んでいる。町の活性化へ、藤本浄孝町長(ふじもと・きよたか=49)は「自然環境はもちろん、山口県一、子育てしやすい環境も目指す」と語る。

 町の人口は約1万5000人で、30年足らずで半減した。活性化策として「関係人口100万人」を掲げるが、「島に来た人に、景色や自然だけでなく、人の暮らし、営みも魅力的だと思ってもらうことが、人口減少の抑制につながる」との考えから、まずは「われわれの生活を充実させていくこと」を重視する。

 中でも力を入れるのが、子育て支援だ。「子育ての充実は今いる人に満足してもらえるし、外の人が住んでみようかなと思うきっかけになる」と強調。米軍岩国基地関連の交付金を活用し、小中学生の給食費や医療費を無料化したほか、保育園も無料に。医療費助成は高校生への対象拡大も見据える。

 島内の保育園には英語講師を派遣。明治時代の移民を機にハワイとの関係が深まり、「おじいさんおばあさんには、実は英語の方が得意という人もいる」という。カウアイ島との姉妹島締結からは今年で60年を迎えた。「町のバックボーンや伝統的に教育熱心なところを(施策に)つなげていきたい」と話す。

 にぎわいづくりにも取り組む。町内での起業を目指す人を対象に、道の駅の店舗を格安な料金で期限付きで貸し出す「チャレンジショップ事業」を展開。道の駅で経営に挑戦する機会を提供し、「その間にお客さんの輪を作ったり、開店資金を蓄えたりしてもらう」狙いだ。町内での出店に結び付いた例も複数あり、観光誘客にもつながっている。

 今年度からは、光ケーブルの通信速度を高速化する事業もスタートした。住民の利便性向上に加え、企業誘致への効果も期待され、「情報インフラは都市と変わらず、かつ自然環境もあるかなり良い環境だ」と胸を張る。

 町外出身者への事業承継支援はもちろん、これまで手薄だった血縁者間の承継を補助する制度も用意し、UIターンの呼び込みも図る。「人々の営み」や「住む環境」にこだわる町づくりで、「楽しい島、住みたい島、行(生)きたい島」を目指している。

 〔横顔〕3人の子どもを育てる父親で、実家は代々続く寺院。最近購入したというロードバイクが趣味で、ロングライドにも挑戦したいと話す。

 〔町の自慢〕町出身の民俗学者・宮本常一。「地元の人がこの地域を良くしたいと思わなければ、その場所は良くならない」という教えは島に根付いているという。

(了)

(2023年6月28日iJAMP配信)

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