2023/令和5年
104日 (

インタビュー 【トップインタビュー】チャレンジする自治体でありたい=百瀬敬・長野県塩尻市長 2023/06/30 08:30

百瀬敬・長野県塩尻市長

 昨年9月に初当選した長野県塩尻市の百瀬敬市長(ももせ・たかし=53)は、2024年度から9年間の第6次総合計画を策定中だ。統合型交通サービス「MaaS(マース)」や自動運転など自治体をフィールドとして実証実験を行いたい民間企業から持ち込まれた案件で「共創」が進んでいると強調。「提案案件が大変増えて好循環が生まれている。チャレンジする自治体でありたい」と力を込める。

 昨年10月の就任後、「徹底した対話と現場主義」を掲げ、約1カ月にわたり市内全10地区で市民との対話集会を開いた。身近な道路整備や子育て支援の充実に加え、高齢になったときの買い物や通院に必要な「公共交通をきちんと確保してほしいという要望が多かった」という。

 市は、定時定路線バスや鉄道など既存の手段に、人工知能(AI)活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」や、実証実験を進めている自動運転バスといった新技術を組み合わせた「塩尻型MaaS」の構築を目指している。公共交通の確保に向け、「最適な解を求めなければならない。解決できれば市民の生活の質は飛躍的に向上する」と意気込む。

 6月19日には産学官でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する拠点となる「core(コア)塩尻」が全面オープンした。市振興公社が整備と運用を担い、自動運転技術やMaaSを手掛ける市外の企業8社が参加。コワーキングスペースやサテライトオフィスなどを設けた。「産学官の連携により市民がデジタルの恩恵を享受できる場所にするとともに、デジタルを通じてまちに変革を起こす仕組みを作りたい」と強調する。

 市と公社は子育てや介護、障害などで就労に時間的な制約がある人が安心して働ける自営型テレワーク事業「KADO(カドー)」を推進している。「女性や障害者が自分の働きたいときに働きたいだけ働ける」施設で、企業などからのアウトソーシングを受注しており、自動運転用3次元地図データの作成も手掛けている。登録者約800人、実労働者約380人で、22年度売上高は約3億5000万円に達した。

 策定中の第6次総合計画では「チャレンジングだが、指標の一つに『幸福度』を設けたい」と明かす。「同じ状況でも幸福と感じる人と感じない人がいるので、どう数値化するかは難しい」。それでも幸福度という指標を掲げることで、「市民の幸福度を高めるには何が必要か、一緒に考えてもらえれば」と期待する。

 〔横顔〕趣味はスキーとサッカーの松本山雅FCの応援。スキーシーズンは週末などに現地に2時間滞在できれば滑りに行く。

 〔市の自慢〕伝統的工芸品の木曽漆器と、15あるワイナリー。360度パノラマが楽しめる高ボッチ高原、生活感が残る宿場町の奈良井宿。

(了)

(2023年6月30日iJAMP配信)

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