インタビュー 【トップインタビュー】世界遺産追い風に人口増を=知花靖・沖縄県国頭村長 2023/07/04 08:30

沖縄本島最北部に位置し、面積の約84%を亜熱帯照葉樹林に覆われる国頭村。「やんばる」と呼ばれる自然豊かな一帯は、ヤンバルクイナやノグチゲラなど希少生物が生息し、2021年、世界自然遺産に登録された。知花靖村長(ちばな・やすし=63)は「登録されたのは新型コロナウイルス感染が一番厳しいときだったが、今年は観光客が増えている」と述べ、観光を中心とした村の活性化に期待を示した。
村のシンボルはヤンバルクイナで、国の天然記念物に指定されている。ただ、飛べないことから交通事故の犠牲になるケースも多く、県や国と連携し、安全対策を進めている。車が通ると音が出る道路や、道の下を横切るトンネルを整備したほか、国頭、東、大宜見の「北部3村」に天敵のマングースを入れないためのフェンスを設置。「一時期は700羽ぐらいまで減ったが、1500羽ぐらいまで増えたといわれている」と表情を緩める。
村の最大の課題は人口減だ。ピーク時に約1万2000人だった人口は、約4500人にまで減った。65歳以上の高齢化率は37%に達する。18歳までの医療費無償化に加え、昨年からは小中学校、幼稚園、保育所の給食も無料に。入学、卒業祝い金や修学旅行費の助成も実施しているが、人口減に歯止めがかからないという。
ただ、世界遺産登録を機に、移住の問い合わせが増加。所得と関係なく入居できる村営の住宅の整備に加え、少子高齢化のあおりで余っている教員住宅や、村内に数多い空き家の活用も図っている。ネックは大型で家に備え付けられていることもある沖縄特有の仏壇だ。「仏壇が残っているところは空き家扱いされず、なかなか貸してくれない」と嘆く。
「世界遺産に登録されたし、当然自然は守っていく。ただそれだけだと村民の理解は得られない。観光客が増えて仕事も生まれ、人口が増え、活性化したという実感が湧かないと」。地元ガイドの育成や、雇用や地元食材の消費を生む宿泊施設の誘致など、手を打ち始めている。
〔横顔〕温厚な人柄だが、中学、高校時代は野球に打ち込み、エースとして活躍。
〔町の自慢〕東シナ海と太平洋に面し、深い山と清流もある大自然。学習施設「クイナの森」では生きたヤンバルクイナを見られる。
(了)
(2023年7月4日iJAMP配信)