2023/令和5年
925日 (

インタビュー 【トップインタビュー】観光軸に地域振興を=田中明・岐阜県高山市長 2023/07/07 08:30

田中明・岐阜県高山市長

 全国でも有数の観光都市として知られる岐阜県高山市にインバウンド(訪日観光客)が戻りつつある。新型コロナウイルス禍で一時期は外国人はもちろん、国内旅行者の姿もほとんど見られなかったが、今春ごろから急速に回復。江戸時代に建てられた木造商家などが軒を連ねる古式ゆかしい街並みが世界各国から訪れた観光客でにぎわっている。田中明市長(たなか・あきら=62)は「観光を基軸とした地域経営をやってみたい」と意気込む。

 今年4月に市内の宿泊施設に滞在した外国人は2019年同月比で79.34%。「コロナ前の8割の水準まで戻ってきた。訪日客では66.6%なので、日本全体を上回る勢いで回復している」と手応えを語る。

 コロナが急拡大した20年のゴールデンウイーク。「街中に人っ子一人いなかった。一体どうなってしまうのかと思った」。それから3年。観光客の順調な回復ぶりに、「民間と行政が一体となり、数十年にわたって観光振興に継続的に取り組んできたことが礎となった。高山市の強みと言える」と実感している。

 コロナ後の観光については「考え方を変えていく」と語る。「観光は宿泊施設や飲食店が潤うだけではなく、農業活性化や雇用確保につながり、いろいろな人が関わる。非常に裾野が広い」と指摘。「子どもたちへの郷土教育、障害者や高齢者への取り組みにも生かせる」と展望する。

 重視しているのは民間が推進役となる取り組みだ。「DMO(観光地域づくり法人)のような組織で、誰に来ていただくか、プロモーションの仕方をどうするかが戦略的に検討される。行政は財源確保や人材投入でバックアップする」と話す。

 姉妹都市の長野県松本市と進めている、中部山岳国立公園を核とした「ビッグブリッジ構想」は実現に向け軌道に乗り始めているという。「国内外から行ってみたいと思われるような、世界に通用する山岳観光地域をつくっていきたい」と力を込める。

 「数を重視したこれまでの観光だけではなくて、(市民が)地域の魅力をしっかり提供し、そこに対価を払っていただける人たちを取り込みたい」。京都など他の観光地では激増した観光客が地域住民と摩擦を引き起こす「オーバーツーリズム」が問題となっているが、「大動脈の新幹線駅がある京都とは違い、高山では市民の日常に支障が出ることは少ないだろう」とみる。「来る人との調和は必要。来ていただくことで、私たちの生活にやりがいや潤いが生まれていることを(市民が)感じなくてはいけない。そうでないと観光施策に成功しているとは言えない」と強調した。

 〔横顔〕昨年8月の市長選で初当選し、市長に就任。中学校時代に始めたフォークギターが趣味。フィットネスクラブに通い、健康維持に余念がない。

 〔市の自慢〕人懐こい子どもたち。学校を訪問すると、「市長」「こんにちは」と屈託のない笑顔で手を振ってくれる。

(了)

(2023年7月7日iJAMP配信)

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