2023/令和5年
927日 (

インタビュー 【トップインタビュー】豪雨の教訓薄れさせず継続=伊原木隆太・岡山県知事 2023/07/10 08:30

伊原木隆太・岡山県知事

 2018年7月の西日本豪雨災害で死者95人、行方不明者3人(2023年6月末時点)に及ぶ甚大な被害を受けた岡山県。伊原木隆太知事(いばらぎ・りゅうた=56)は、災害から5年がたち当時の担当者が異動などで代わることに触れ「教訓をいかに仕組みに落とし込んでいくか。いろんな形で続くような形にすることが大事だ」と力を込める。

 伊原木氏は「訓練では得られない生々しい学びだった」と振り返る。災害前に構築された市町村からの被害報告システムが、災害時は十分に活用されなかったという。被害が大きく、職員の手が回らなかった市町村の状況を県が把握できず、支援の優先順位が低くなった。

 市町村に情報連絡員を派遣する制度を正式に整えるなど、経験を「仕事のやり方、組織の作り方に反映させている」という。「対応がかなりうまくなっていることに間違いない」と自信を見せる。

 被災の経験や教訓が薄れつつあるのは県民も同じだ。伊原木氏は「今後起こり得る南海トラフ地震などを見据えて、少しでも県民が備えるきっかけにしなきゃいけなかった災害だ」と話す。7月に「おかやま県民防災シンポジウム」を開催する。

 引き続き、災害の備えに関する普及活動を行うほか、研修や出前講座で拡張現実(AR)などを活用し「災害を自分事として捉えられるよう、体験できる機会を増やしたい」と語る。

 災害時「国や他の都道府県からの支援がありがたかった」と振り返る。14年度から鳥取県の危機管理部門と人材交流をしていたため、災害時に岡山県の知識がある鳥取県職員から迅速に支援を受けることができたという。

 県管理河川、道路の復旧工事の大半で23年度中に完了が見込まれるなど、ハード面の復旧は5年間で大きく進んだ。「再度災害防止に向け、復旧・復興の総仕上げを目指して事業を推進する」と意気込む。6年目となる今年は、5月上旬にも警報級の大雨が降ったことに触れ「総仕上げを迎える局面での大雨などの影響を最小限にするための対策に万全を期したい」と強調した。

 〔横顔〕多趣味。「いろんなジャンルをちょっとずつかじって、全然できなかったことがちょっとずつできるようになるのが幸せ」と語る。スポーツはテニスやスキー、ゴルフをやってきた。

 〔県の自慢〕全国的に有名な岡山県出身のお笑い芸人やアーティストが出てきたことで「県民が岡山に自信を持つようになった。県外に出て活躍しようという人も増えた」(知事)という。

(了)

(2023年7月10日iJAMP配信)

同一カテゴリー記事