インタビュー 【トップインタビュー】交流人口拡大へ投資呼び込み=河合永充・福井県永平寺町長 2023/07/12 08:30

「究極のデジタルとアナログが共存する町」。国内最先端の自動運転サービスと曹洞宗の大本山永平寺の禅の文化が併存する福井県永平寺町を、河合永充町長(かわい・ひさみつ=50)はこう表現する。北陸新幹線県内開業を2024年春に控え、民間投資の呼び込みを通じた交流人口の拡大を目指す。
1、2期目の8年間は、在宅訪問診療所の設立や予約制の乗り合いデマンド交通「近助タクシー」を整備するなど、医療や交通の面で町民が住みやすい町づくりを進めてきた。特に重視したのは「役場だけでなく、地域や住民を巻き込んだ取り組み」だ。
在宅訪問診療所では、町内にある福井大医学部と連携。医師や看護師が患者を訪問して医療処置や健康観察、介護などを行いつつ、総合診療医や看護師の研修の場としても活用した。近助タクシーでは、町の有償ボランティアにドライバーを委託。過疎地域の移動手段の確保と同時に、高齢者の見守り活動につなげた。
3期目の現在、特に注力するのは民間投資の呼び込みだ。北陸新幹線の金沢―敦賀間開業に向け、就任当初から進めてきた永平寺の門前町の町並み整備といったハード面の対策に加え、企業版ふるさと納税などを活用した観光事業への支援を進めている。
地域未来投資促進法に基づく重点促進区域を設定し、投資を促すための環境づくりも行ってきた。22年に地元酒造による酒と食をテーマとした複合施設がオープンするなど、制度を活用した企業の事業も活発化し始めている。
今年5月には、特定の条件下で全ての操作をシステムが行う「レベル4」の自動運転による移動サービスが始まった。国内初の取り組みで、「体験しに来る観光客が増えれば」と期待を示す。
一方で、新たな施設や住宅の整備が制限される市街化調整区域の多さや近隣市町との都市計画の重複を背景に、企業誘致に当たっての規制が厳しいことが課題だ。農地が多い地区では住宅を建てるのも困難な状況で、住民と意見交換しながら、新たな地区計画の作成に取り組む。
今後は規制の変更や都市計画の一本化を行い、施設や住宅を整備しやすい地域を設けるなど、「民間投資への支援や環境づくりに力を入れ、交流人口拡大につなげる」方針だ。
〔横顔〕趣味は自転車。1カ月に1000キロ以上乗ることもあったが、最近は多忙で乗れていないのが悩み。
〔町の自慢〕九頭竜川周辺の景色。春はサクラマス釣り、夏はアユ釣り、初秋には灯籠流し、冬は雪景色と四季折々の風景を楽しめる。
(了)
(2023年7月12日iJAMP配信)