2023/令和5年
104日 (

インタビュー 【トップインタビュー】「再エネのまち」で存在感=加藤龍幸・北海道石狩市長 2023/07/19 08:30

加藤龍幸・北海道石狩市長

 札幌市に隣接し、日本海側約70キロを石狩湾に接する北海道石狩市。大規模な洋上風力発電の建設やデータセンターの誘致が進み、昨年には国の「脱炭素先行地域」に選ばれた。若者世代を中心に移住が進んでいることから市の人口は社会増に転じ、加藤龍幸市長(かとう・たつゆき=67)は「『再エネのまち』として、プレゼンスが上がってきている」と期待を口にする。

 札幌圏最大の工業流通団地として知られる「石狩湾新港地域」には、約3000ヘクタールの用地に約750社の企業が立地している。広大な土地や強い風などのポテンシャルを持ち、風力や太陽光、バイオマスといった再生可能エネルギーの集積も進んだ。

 脱炭素先行地域の取り組みとしては、再エネ電力を特定送配電事業でデータセンターや公共施設に供給することなどによって、エネルギーの「地産地活」につなげ、さらなる産業集積を目指す。

 「供給側と需要家とが一緒に脱炭素化に向けて取り組む上で、市はコーディネートする役割。地球規模の課題に基礎自治体も大きく寄与できるという意味では、やりがいがある」と気を引き締める。脱炭素化の取り組みは他自治体からも注目を集め、2022年度の視察件数は計50件に上った。

 喫緊の課題は、人口対策だ。市の人口は約5万8000人で、06年のピーク時から約3000人減少した。「人口を維持すれば、社会基盤や社会福祉を支えられる」という考えの下、初当選時から人口維持を公約に掲げてきた。

 中でも、子育て施策に注力する。認定こども園の保育士らに、採用時や一定期間継続して勤務した場合に奨励金を交付する事業に取り組んでいるほか、24年度から中学生までの医療費無償化を目指す。

 人口は減少する一方、19年以降は30代を中心とする若者世代の転入が増え、社会増が続く。再エネを活用した産業振興が背景にあるとみており、「投資によって雇用が増えて、交流人口や定住者も増える。裾野の広い産業なので、税収も含めて期待は大きい」と話す。

 市は今年度、さらなる企業進出を見据え、石狩湾新港地域の新たな用地確保に向けた調査を進める。「全市民が暮らしやすいまちづくりを目指し、企業誘致や人口増の施策に職員と共に汗を流したい」と意気込む。

 〔横顔〕道職員や市企画経済部長などを経て、19年に初当選。役職に関係なく議論できる環境が理想で、市役所内を「うろうろ」しながら職員とコミュニケーションを取る。「若い職員と直接会話できるのっていいじゃないですか」とほほ笑む。

 〔市の自慢〕市民力。02年に「石狩市行政活動への市民参加の推進に関する条例」を施行し、市全体でまちづくりを進めてきた。

(了)

(2023年7月19日iJAMP配信)

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