インタビュー 【トップインタビュー】LRT開業機に町の新たな魅力発信=大関一雄・栃木県芳賀町長 2023/07/28 08:30

宇都宮市の東に隣接する栃木県芳賀町は、田園風景と先進的な工業団地が同居する都市近郊の町。8月26日、JR宇都宮駅東口からホンダの研究開発拠点などを抱える町内二つの工業団地まで約15キロを結ぶ全線新設としては国内初の次世代型路面電車(LRT)が、この地で開業する。全国的な注目が集まる中、大関一雄町長(おおぜき・かずお=62)は「LRTが走るだけでは何も変わらない。魂を入れるのはわれわれ」と町の新たな魅力発信と活性化に意欲を見せる。
もともと町職員で総務企画部長を最後に退職したが、その後も道の駅と併設の温泉施設を一体運営する第三セクター「芳賀町ロマン開発」の社長として特産のナシなどを使った商品開発に注力。4月告示の町長選で無投票初当選、5月18日に就任した。
LRT開業に合わせて検討している町の活性化策も「道の駅はが」を中心に進める考えだ。「町の情報発信の一つのシンボルが道の駅」と語り、8月下旬から秋にかけて旬を迎える「豊水」「幸水」「にっこり梨」など特産のナシを使ったコース料理を開業記念として用意、町のPRに力を入れる。LRT芳賀工業団地停留所にはバス、車、自転車などに乗り換えられるトランジットセンターがあり、民間のバスや温泉施設の送迎バスも活用して道の駅に人を誘導する。LRTと温泉施設利用の場合の割引プランなども検討する考えだ。
ただ、LRTの利用が進まず赤字となれば、運営会社に10.2%を出資する町にも財政負担がのしかかる。「LRTがデメリットになることもある」と大関氏。利用者のベースを広げるため、トランジットセンター近辺の宅地開発や町内に約300戸ある空き家の利活用を進め、地価高騰で高額物件が増えた宇都宮市などからの移住を促す考え。「LRTで注目されているだけに、空き家も負の遺産にならずプラスに働くのでは」と期待する。
また、多くが自家用車で通う芳賀工業団地の従業員にLRTを利用してもらうため、開業時には民間バス会社に要請して団地内の巡回バスを運行する。20キロ近くあるという町の南北を結ぶバス路線開設も検討し、LRTを含めた公共交通の充実を図りたい考えだ。
今年は町制70周年の節目の年。10年後、20年後も見据えた町づくりのため、約1万5000人でほぼ横ばいの人口を増やすことも視野に、選挙公約に掲げた新たな振興計画の策定にも取り組む。
〔横顔〕芳賀町総務企画部長、道の駅などを運営する芳賀町ロマン開発社長を経て現職。今も同社長兼務。公務員生活を終えた後に資格を取ったコーヒースペシャリストとしての知識・経験を生かし、道の駅では自らデザートも考案。若いころは野球、今はゴルフが趣味だが、「最近アベレージが落ちてきて」と笑う。
〔町の自慢〕栃木県有数のナシの産地。特に「新高梨」と「豊水」を掛け合わせた「にっこり梨」は800グラムを超える大きさと甘味が特長で、生産量は宇都宮市に次ぐ全国2位。町民は、控えめだが人情に厚い人が多いという。
(了)
(2023年7月28日iJAMP配信)