2023/令和5年
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インタビュー 【トップインタビュー】区民が主体の区政を=岸本聡子・東京都杉並区長 2023/07/31 08:30

岸本聡子・東京都杉並区長

 原水爆禁止運動の発祥地であり、市民運動が盛んな東京都杉並区。4月に行われた区議選では女性議員数が過半数に達し、全国的に注目を集めた。2022年の区長選で初当選した岸本聡子区長(きしもと・さとこ=49)は「区民が自分たちのことは自分たちで決めると主体性を持って、地域づくりに関わっていくことが大切だ」と強調する。

 区長就任前は、国際NGOの調査研究スタッフとしてヨーロッパで20年以上暮らし、公共インフラの再公営化などを研究してきた。「国境や立場を超えてさまざまな意見に触れることには慣れているが、行政組織の考え方や物事の進め方にはなじみがなく、毎日走りながら悩んでいる」と苦笑する。

 現在、区では老朽化した公共施設の再編計画の策定を進めている。児童館や高齢者施設などの統廃合は区民の間で議論を呼び、区長選でも大きな争点となった。「区民の反発は再編そのものではなく、再編に人の顔が見えないことに対する不満だったのではないか」と分析。その上で「子どもや高齢者の視点が欠けていた。住民が話し合って、職員のサポートを受けながら合意形成する再編でなければならない」と訴える。

 こうした気付きを踏まえ、行政課題について区長と区民が意見交換する「聴っく(キック)オフ・ミーティング」に取り組んでいる。参加者は自主的な応募者だけでなく、無作為抽出で招待した住民もいる。「自分たちが住んでいる地域の政治に当事者として関心を持ってもらうきっかけになる」と手応えを感じている。

 今年度には、区民から予算案に盛り込む事業を募集し、区民による投票で事業を決める「参加型予算」の取り組みも新たに導入した。

 4月の区議選では会派の枠組みを超えて新人候補者が集結する「共同街宣」を後押しするなど投票率を上げるための工夫も。その結果、投票率は43.66%で、前回と比べて4.19ポイント上昇。中でも30代女性の投票率は40.09%で、前回より9ポイント近く伸びた。「自分に近く、親近感のある人たちが選挙に出たことで、投票しようと思ったのではないか」と推察する。

 女性議員が多く当選したことで、区議会では男女平等や子どもの権利などに関する質問が増えた。「地域社会で話し合われていることが議会にも反映されている。生活者として地域で生きるさまざまな立場の人たちが議員であるべきだ」と語り、新しい議会に期待を寄せた。

 〔横顔〕趣味はジョギング、筋トレ、空手。何も考えずに走ることと、頭を使って動かなければならない武道の組み合わせが好き。

 〔区の自慢〕高い建物がなく、昔ながらの商店街が多い。「環境に優しい街。時代の先を行くレトロ感がある」

(了)

(2023年7月31日iJAMP配信)

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