インタビュー 【トップインタビュー】新庁舎拠点にまちづくり=伊藤康志・宮城県大崎市長 2023/08/01 08:30

宮城県北西部に位置する大崎市。世界農業遺産に認定された広大な水田農業地帯「大崎耕土」を構成する自治体の一つで、2006年に旧1市6町が合併して誕生した。今年5月には新庁舎での業務が始まり、伊藤康志市長(いとう・やすし=73)は「新庁舎を拠点に新たなまちづくりをスタートさせたい」と意気込みを語る。
新庁舎の整備は、市が11年の東日本大震災を受けて進めてきた「中心市街地復興まちづくり計画」の総仕上げ。災害に強いまちづくりを目指し、新庁舎にはオンライン会議に対応した災害対策室を設置。各地で発生する豪雨災害に備え、貯水槽や非常用発電設備も設けた。
これまで分庁舎にあった議場や教育委員会も本庁舎に集約され、合併以来の課題だった行政機能の分散も解決した。「やっと大崎市が一つになった。初代市長として感慨深い」と話す。
次のまちづくり施策として、新庁舎のある市街地と他の地域を結ぶ公共交通の利活用促進にも力を入れている。市内を通るJR陸羽東線(小牛田―新庄間)は、JR東日本が昨年7月に公表した赤字路線の一つ。市は路線の存続に向け、検討会議を22年10月に設置した。
沿線住民との懇談を重ね、今年3月には、駅周辺の駐車場整備や駅のバリアフリー化などの案を盛り込んだ報告書をまとめた。「本当に陸羽東線が市民の生活のために必要なのか。市民と原点に立ち返るチャンスを頂いた」と振り返る。
「絵に描いた餅で終わらせてはいけない」と、4月には利用者増に向けた施策に取り組む部署として、まちづくり推進課内に「陸羽東線利活用推進室」を設けた。10月には、公共交通機関で鳴子温泉郷を訪れた宿泊客を対象に、市内だけで使える電子商品券を付与する事業も始める。「市街地と周縁部を結ぶ公共交通はなくてはならない存在だ。危機感を持って動きだしている」と強調する。
陸羽東線を含む公共交通機関の利活用の一環で、市職員と共に自身も月に2回は同線を利用して登庁している。「市民と常に会うことができ、移動時間の数十分が市政懇談会みたいになる。普段とは違った市の風景も楽しめる」と笑顔を見せる。
〔横顔〕温泉付きの小旅行やカラオケが趣味だが、「最近は公務でなかなか時間が取れない」という。
〔市の自慢〕冬場には数多くの渡り鳥が飛来する。ラムサール条約に登録された蕪栗沼など豊かな自然環境が残っている。
(了)
(2023年8月1日iJAMP配信)