インタビュー 【トップインタビュー】「国と地方はパートナー」=宮下宗一郎・青森県知事 2023/08/03 08:30

青森県の新たなかじ取り役を任された宮下宗一郎知事(みやした・そういちろう=44)。むつ市長時代の激しい言動から国との関係が注目される。「『ケンカしてやろうか』『ガチンコでいくぞ』と見られがちだが、国と地方はあくまでもよりよい国土づくりをしていくためのパートナーだ」とし、「何もかも反抗してやろうということは全然ない」と話す。
県が引き受ける国策の核燃料サイクルを引き合いに、「日本国が全国でやろうとしていることには当たり前のように協力する」としつつ、「どうしても譲れない一線がわれわれにもあることは認識してほしい」とも。「私たちの生活が大きく変わる可能性があることについて、一方的に決められることにはしっかりモノを申していかなければ」と強調する。
知事として、県民と向き合うことを一番に掲げる。「世の中を変えるヒントは誰が持っているか分からない。アイデアをみんなからもらうことが大事だ」。県民からの話がきっかけで問題意識を強めたのが、物流業界の「2024年問題」だ。24年問題は7月の全国知事会でも提起したが、「選挙が始まる前までは全く問題意識がなかった」という。
知事選に向けて県内で運送業者の声を聞くと、出てくるのは24年問題のことばかり。人材が足りない、収益が下がる、荷主が大変だ―。「トータルで考えると『これは大変なことになるのではないか』と。直接聞くことを大事にしないと、県民に寄り添った行政はできない」と話す。県民と直接対話する仕組みづくりにも着手。「テーマを決め、県内各地で週1回できるよう、知事が対話することを恒例行事にしたい」と意気込む。
県庁職員について「すごく突き詰めて考えてくれるし、専門性は非常に高い」と評価する。ただ、各分野で隔たりがあり、一部の部局の権限が大きいといった課題も指摘。「若い職員に、もう少しうまく政策の企画立案に携わってもらった方がいい」とし、組織改革の中で改善する意向だ。
全国で喫緊の課題となっている自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)に関し、「県庁で一番大事なのはペーパーレスだ。何カ年かで紙を撲滅することをやっていかなければいけない」と強調する。
現在、秘書課では緊急時を想定して法人向け対話アプリ「LINE WORKS(ラインワークス)」を活用する案が出ているそうだが、「秘書課でもガラケーの人がいた」と苦笑。「秘書課はそれなりに(能力のある)皆さんがそろっているが、その中でもガラケーが1人いて、つい最近スマートフォンにした人もいる。それくらい進んでいない」と手厳しい。「ペーパーレスもそうだが、あらゆる分野でDXを進めて働き方を大きく変え、風通しをよくしなければ」と力説する。
6月の知事選では次点に23万票以上つけ40万4358票を獲得した。地元の下北地方5市町村の得票率は全て9割を超えた。この人気を背景に地域政党をつくるとの臆測もあるが、「そういうことをやるにはものすごく政治のパワーが必要。今、私のパワーの全ては行政、県政に向き合わないといけない。そういう余力は今の時点ではない」と話す。
〔横顔〕趣味はランニングで、就寝前のルーティンは読書。現在は単身赴任だそうで「娘たちとコミュニケーションを取りたい」と寂しそう。
〔県の自慢〕「各地で本当に癒やされる」という雄大な自然。
(了)
(2023年8月3日iJAMP配信)