インタビュー 【トップインタビュー】「裏通り」逆手に村づくり=當山全伸・沖縄県東村長 2023/08/07 08:30

沖縄本島北部の東海岸沿いに位置する東村。大動脈の国道58号が通る西海岸地域に比べ、東海岸は観光開発が進んでおらず、村の人口は沖縄本島で最も少ない約1700人だ。今年4月に2期目の当選を果たした當山全伸村長(とうやま・まさのぶ=74)は「58号から考えると、こちらは裏通りだが、逆にその特徴を生かした村づくりをしていきたい」と意気込む。
パイナップルの生産量は約1480トン(2022年度)と、全国一を誇る。特に沖縄県が研究、開発したゴールドバレルという品種は大玉で糖度が高く、高級パインとして人気を呼んでいる。「甘くて酸味がない。果物の王様と言われるパインの中でも、王様だろう」。東村ブランドとしてアピールしたいと當山村長は語る。村内には沖縄県で唯一のパイン缶詰工場があり、国産パイン缶詰のほか、ジュース製造にも力を入れている。
山がちで自然豊かな北部3村(国頭、大宜味、東)の中でも、特に手付かずの自然が残り、静かで落ち着いた雰囲気が広がっている。村内にも広がる「やんばるの森」は21年に世界自然遺産に登録されており、「地元のガイドを増やし、自然を活用した観光のモデルをつくる」考えだ。
沖縄本島の上水の約6割を供給している一大水源、福地ダムがあることから、環境保護に重点を置かざるを得ない。當山村長は「森に行くにはダムを渡らないといけないので、観光客数を制限しなくてはならない。料金は高くなるが、それだけの価値があるコース」と自信を見せる。今年は村制施行100年。次の100年を見据え、東海岸地域の特徴を生かした観光と農業の在り方を模索している。
隣接する国頭村や名護市の東海岸地域との協力も図りたいという。「人口が減っていき、学校の統廃合や買い物弱者など、抱える課題が似ている。自治体ごとに対応するのでなく、東海岸ルートで連携できれば」と強調する。
〔横顔〕長年の村役場勤務を経て、19年、村長に。腰痛にいいと聞き55歳で始めた空手は3段の腕前。趣味は映画観賞で、アクションものが好き。
〔村の自慢〕全国で最も早い3月初めから催される「つつじ祭り」
(了)
(2023年8月7日iJAMP配信)