インタビュー 【トップインタビュー】大河で人気、街の魅力発信=中野祐介・浜松市長 2023/08/15 08:30

徳川家康が17年間本拠とし発展の礎を築いたとされる浜松市。大河ドラマ「どうする家康」では、浜松城を舞台に、織田信長や武田勝頼に翻弄(ほんろう)される家康が下す苦渋の決断が見どころの一つ。主演の松本潤さんの人気もあり、観光客が多く訪れ、市は大いに盛り上がっている。4月に就任した中野祐介市長(なかの・ゆうすけ=53)は「浜松はものづくりの街と言われるが、三ケ日みかんに代表されるように農業も盛ん。浜名湖や天竜川といった自然にもあふれ、ウナギやギョーザなど食文化でも有名な産物がある。観光の面でも、浜松の魅力を全国、世界に向けて発信していきたい」と話し、シティプロモーションを積極的に展開していく考えだ。
6月、台風2号による豪雨災害で土砂崩れや浸水被害などが発生し、男性1人が亡くなった。「住民の生命、財産を守るのが行政の一番の役割なので大変残念。重く受け止めている」と苦渋の表情。男性が亡くなった土砂崩れ現場には発生3日後に入り住民の話を直接聴くなど、現場第一主義を貫く。「災害の状況は現場に入って見てみないと分からない。同じことを繰り返す愚があってはならない。そのために行政として何ができるのか、現場を見て考えたかった」と率直な気持ちを語る。その上で「災害対応はしっかり進めなくてはならない。自助、共助、公助が組み合わさってしっかり動く体制をつくり、対策を講じていきたい」と顔を引き締めた。
選挙では「まち・人・仕事を元気にする」をキャッチフレーズに地域の活性化を公約とした。子ども子育て政策の充実は、目玉施策の一つ。「妊娠から出産、子育てに至るまで、子育て世代の相談にワンストップで対応できるこども家庭センターを来年4月に各区、行政センターに設置する。その準備を大至急進めたい」と話すとともに、未就学児の医療費無償化などにも意欲を示す。
もともと総務官僚で自治体勤務も豊富。首長への転身を決断した理由を「地方自治、地域の活性化にずっとライフワーク的に携わってきた。霞が関でさまざまな制度設計するのも醍醐味(だいごみ)だが、地方自治の現場で地域の活性化、自治の実現に取り組みたいというのは元からあった」と明かし「その現場のトップをやるのは、いわば本望」と強調する。
理想とするのは「地域の力を引き出す市長」。「浜松のように力のある地域での行政の役割は、市民や企業の力を引き出すコーディネーターであったり、縁の下の力持ちであったり。市民、企業の声に耳を傾け、ともに浜松をより良い街にしていく。そんな市長でありたい」。少しはにかむように笑いながらも、最後は迷いのない口調できっぱりと言った。
〔横顔〕1994年東大経卒。総務省勤務を経て4月の市長選で初当選。座右の銘は「初心忘るべからず」。浜松北高校時代はアーチェリー部。「3年間ずっと。当時は結構、強豪校だったんですよ」。
〔市の自慢〕「家康公ゆかりの地であり、出世の街・浜松というのが一番の売り。ここでの苦労が天下泰平260年の礎を築いた」と強調。「食べ物で言えば、家康公の活力源となったウナギ」と語る。
(了)
(2023年8月15日iJAMP配信)